小学生の宿題といえば漢字ドリル。子どもが漢字を書く様子を見て「あれっ、そんな書き順だっけ?」と、ネット検索したことはありませんか? 親世代が必死で覚えた書き順、今はどうなっているのでしょうか。文字や筆順の教育を専門とする広島大学大学院の松本仁志教授に話をうかがいました。※後編<「漢字」が苦手な子に効果的な学習方法は? 「大学入試の書き取り問題減少、今後は読めればOKになる可能性も」>に続く

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「必」には7通りの書き順があった?

――子どもの漢字の練習を見て、「あれ?書き順変わった?」と思う親も少なくありません。書き順(筆順)は変化しているのでしょうか。

 そう思う大人はよくいるのですが、それは思い込みですね。親御さんが小学校の時に使った教科書を見てみれば、今と同じ筆順が出てくるはずです。かつて学校で習った漢字をいつの間にか転用し、その人にとって書きやすい心地よい筆順になっている。習った記憶が塗り替えられていると考えられます。

――書き順は昔から変わっていないのでしょうか。

 1958年、文部省(現在の文部科学省)が「筆順指導の手びき」(以下、手引き)を刊行してから、徐々に統一した筆順が浸透していきました。それまでの書き順は教える人によってバラバラだったんです。

 たとえば「必」という漢字。私が調べた限りでは7通りの教え方がありました。そういう状況だったので、ルールに則った方が教えやすいとなり、教科書会社に向けて手引きが作られました。

 今の後期高齢者世代は書き順が統一されていない時代に育っていますから、その世代の教員や親に教わった人は、もしかすると手引きとは違う書き順で教わったかもしれません。平成になってからは親も子も手引きに沿って習っているので、世代間ギャップは解消されているはずです。

書き順を学習する3つの意味とは

――そもそも書き順を学習するメリットとは?

 書き順には整えやすい、書きやすい、覚えやすい、という3つの意味があります。書き手や読み手、学習者にとってそれぞれメリットがある。だから小学1年生の段階から学習します。漢字には「上から下」「左から右」「横から縦」という大原則はありますが、実は同じ漢字でも日本と中国では書き順が違う漢字がたくさんあるんです。

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大楽眞衣子
大楽眞衣子

ライター。全国紙記者を経てフリーランスに。地方で男子3人を育てながら培った保護者目線で、子育て、教育、女性の生き方をテーマに『AERA』など複数の媒体で執筆。共著に『知っておきたい超スマート社会を生き抜くための教育トレンド 親と子のギャップをうめる』(笠間書院、宮本さおり編著)がある。静岡県在住。

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