写真家の徳永克彦さんが今年3月まで半世紀にわたり日本の防衛を担ってきた航空自衛隊のF-4ファントムの魅力を余すところなくとらえた写真集『PHOREVER』(ホビージャパン)を出版した。徳永さんに聞いた。
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本書のタイトルは「ファントム(Phantom)」と「永遠なれ(Forever)」を組み合わせたもの。
扉ページを開くと、紺色の空をバックに真っ白な機体が迫ってくる。
これはちょうど50年前に導入された航空自衛隊のファントム第一号機。退役を記念して機体下面を白く塗装する導入当時のカラーリングが再現され、そこに「Thank You 1971-2021」と描かれている。
のっぺりとした形状の最近の機体とは違い、武骨でメカニックなファントムの姿がビスの一本一本の頭まで鮮明に写し出されている。
白い機体とは対照的に、対艦攻撃用に濃い紺色の迷彩を施されたF-4が高度約100メートル、超低空の洋上を飛んでいく。
機首の部分に専用の大型フィルムカメラを搭載し、大規模災害発生時に活躍した偵察型のファントムの姿も収められている。
空中でダイナミックに、あらゆる角度からとらえられた機体の姿はまさに徳永さんならでは。
徳永さんはさまざまな軍用機への同乗が許された世界的にも極めて数少ない写真家なのだ。
■空撮を航空幕僚長に相談
1966年、第四次防衛力整備計画の一環として老朽化が著しいノースアメリカンF-86Fに代わる戦闘機の選定がスタート。最終的にF-4(Eモデル)を日本向けに改修したF-4EJの導入が決定した。
「航空自衛隊のF-4は最初の配備、72年8月に百里基地(茨城県)に臨時F-4EJ飛行隊ができたときからずっと撮っています」と、徳永さんは言う。
巻末のモノクロ写真には試験運用される、あの初号機が姿が写っている。
ただ、空撮を始めたのはずっと後のことだ。
「91年ごろ、小松基地(石川県)のF-4が最初ですね。航空自衛隊創設35周年(89年)の後、『空撮を含めた写真集つくりたい』と、空幕長の鈴木(昭雄)さんに相談したんです。実は、航空自衛隊で空撮が許されたのはこのときがほぼ初めてでした」