国産戦闘機F-2の開発の遅れから、そのつなぎとして対艦攻撃任務に投入された第8飛行隊のF-4EJ改。レーダーによる探知を避けるために洋上を超低空で侵攻し、迫る敵艦を対艦ミサイルで撃破するのを主要任務としていた(撮影:徳永克彦)
国産戦闘機F-2の開発の遅れから、そのつなぎとして対艦攻撃任務に投入された第8飛行隊のF-4EJ改。レーダーによる探知を避けるために洋上を超低空で侵攻し、迫る敵艦を対艦ミサイルで撃破するのを主要任務としていた(撮影:徳永克彦)

 徳永さんは当時を振り返り、「航空自衛隊も気を使ってくださいまして」と言う。

 F-4を空撮するのに、最初「性能がよくて、キャノピー(操縦席を覆う風防窓)も大きいF-15からのほうが撮りやすいんじゃないか」と、勧めてくれたのだ。

 F-15は、F-4の後に導入された現在の主力戦闘機である。

 ところが意外なことに、実際に飛んでみると、思ったようには撮れなかった。飛行特性が異なるため、うまくタイミングが合わないのだ。

「例えば、初期加速だと、F-4のほうがずっと速くて、F-15は追いつけないんです」

■パイロットたちとの共同作業

 徳永さんはF-4とF-15の加速の違いを、エンジンの種類が違うため、と説明する。

「F-4のエンジンはターボジェットなので、加速する際にアフターバーナー(推力増強装置)を使うと一発で、ボーンと先に行っちゃう。それに対してF-15はターボファンなので、アフターバーナーにボンボンボンと、いくつかステージがあるんです」

 そして、こう強調する。

「どんな局面であってもいまの新しい機体のほうがF-4よりも動けるとか、速いとか、そういうことではないんです」

航空自衛隊では、偵察型のRF-4Eも導入された。軍事目的だけでなく、大規模自然災害時にはその状況をいち早く撮影。唯一無二の存在として民間協力任務でも大きな貢献をしたものの、ウエットフィルム時代の終焉とともに後継機なしに退役している(撮影:徳永克彦)
航空自衛隊では、偵察型のRF-4Eも導入された。軍事目的だけでなく、大規模自然災害時にはその状況をいち早く撮影。唯一無二の存在として民間協力任務でも大きな貢献をしたものの、ウエットフィルム時代の終焉とともに後継機なしに退役している(撮影:徳永克彦)

 F-4を撮影する際は、それに合った速度域を確保しながら、動きやすい高度で撮ることが重要という。当然のことながら、安全性の確保は最優先である。

「特にエアスピードは気にしますね。あまり遅くなると、機体が動かなくなりますから。なるべく350ノット(650キロ)から400ノット(740キロ)を維持する。高度は1万5000フィート(約4500メートル)が中心です」

 国際線の旅客機の巡航高度は約1万メートルなので、その約半分の高さでしかないが、空気が濃いぶん、かじが効きやすいという。

 ただ、F-4の運用が後半になると、「機体の数が次第に減ってきて、(練習機の)T-4から撮影したこともありました。そのときはお互いの飛行性能の違いを考慮しながら撮らなければならない」。

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