落選した保護者は子育てと仕事・介護などとの板挟みになることが多く、16年には子どもを保育園に入園させることができなかった母親が「保育園落ちた日本死ね!!!」というタイトルのブログをつづり、大きな反響を呼んだ。このように、保護者が保育園に入園を希望しているのに入れない子どもが多数存在することは「待機児童問題」と呼ばれ、解決の必要性が叫ばれてきた。
そこで、自治体の保育園への入園が許可されなかった子どもの保護者が働き、あるいは学び続けるためのセーフティーネットとして、独自に保育施設を設置している大学が複数存在する。16年に文部科学省が全国の大学・短期大学・高等専門学校(計1167校)を対象に行ったアンケート調査では、回答のあった1079校のうち「保育所(施設)を設置」と答えたのは全体の12.5%だった。一方で、国立大学86校のみに絞れば「保育所(施設) を設置」と回答した割合は 53.5%に上る。東大もそのうちの一つだ。
本郷、駒場、白金、柏の4キャンパスに学内保育園が設置されており、東大の構成員であれば部局によらず利用を申請できる。所属する構成員の人数が多い本郷キャンパスでは、自治体の保育園で特に倍率が高くなる傾向にある0歳から2歳の子どもを、駒場・白金・柏の学内保育園では5歳以下の子どもを、各保育園30人まで受け入れている。また、これら四つの全学対象保育園の他に、医学部附属病院などに保護者の所属する部局を限定した「東大病院いちょう保育園」や、株式会社ポピンズ設置の、東大関係者を対象とした企業主導型事業所内保育所である「ポピンズナーサリースクール東大本郷さくら」も設置されている。
これらの学内保育園と東大の子育て支援について、その主体である東大男女共同参画室に話を聞いた。
■学内保育園は働くためのセーフティーネット
──学内保育園を設立することになった経緯は
東大男女共同参画室は06年4月に発足しました。その頃、特に本郷キャンパスのある文京区の認可保育所の待機児童が非常に多く、教育・研究活動や学業に復帰したいという教職員や学生にとっての大きな壁となっていました。一般の保育所では年度の途中に入園することは難しく、早く復帰したくても翌4月まで待たなければならないという課題もありました。そうした状況の中、学内の「保育園を設置してほしい」という声を受け、07年に医学部附属病院の職員を対象とした東大病院いちょう保育園を開園、翌08年には全学対象の四つの保育園(東大本郷けやき保育園、東大白金ひまわり保育園、東大駒場むくのき保育園、東大柏どんぐり保育園 )を開園しました。また、18年には本郷キャンパス内にポピンズナーサリースクール東大本郷さくら(企業主導型事業所内保育所)を新設しました。