風景写真家・工藤智道さんの作品展「列島光明」が6月4日から東京・目白の竹内敏信記念館・TAギャラリーで開催される。工藤さんに聞いた。
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工藤さんが写す風景写真は「オーソドックスな写真」と言われることも多いという。
「でも、ぼくはそうは思っていなくて。オーソドックスに見えるけれど、たぶん、同じように撮ることはなかなか難しいんじゃないかな。実は意外と深い、と思っているんです」
そう言うと、ふふっと自信のこもった笑みを浮かべる。
■緊張感で表現する自然の力
今回の作品は、2年前から発表し始めた「列島シリーズ」で、「列島創生」「列島風貌」に続く第三弾。
「海外にもすてきなところはいっぱいあると思うんですけど、まずは日本を知ってから世界に行こうかな、と。でも、日本がぜんぜん撮り終わらない(笑)」
展示作品は最近4、5年のうちに撮影したものだそうで、選んだ写真は「自分のこだわりが出ている」と話す。
そのこだわりの一つが、「秋の風景がない」ことだという。
風景写真の場合、春夏秋冬の流れで作品を構成することはよくあるが、今回は意図的に秋の写真を外したという。
「秋の風景を入れると、どうもゆるくなって、緊張感がなくなってしまう。紅葉の風景は雅な感じで、あまり『自然の力』を感じない。なので、思い切って、秋の風景はなしでいいか、と」
自然の力を意識するとともに、瞬間に見せる自然のわずかな表情に着目する。
「目ではとらえられない、自然の瞬間の表情を速いシャッター速度でとらえた写真が多い。それに、スローシャッターの写真を入れていくと、どうしても作品全体の雰囲気が穏やかになってしまうんです」
■「どこで撮った写真なんですか?」
撮影場所は、日光・竜頭(りゅうず)ノ滝のようによく知られたところもある。
しかし、これは例外で、「メジャーな場所はほとんどない。竜頭ノ滝も、まずみなさん、この状態では撮らないでしょう」。
修学旅行生がよく撮る場所から写したという作品には、画面いっぱいに茶色く濁った激流が写っている。
「いわゆる、『ザ・観光地』なんですけれど、たぶん、こういう竜頭ノ滝の姿って、ほとんどの人は見たことがない。個展を開くと、よく『これはどこで撮った写真なんですか』って聞かれるんです。で、教えちゃう。でも、そこへ行ったとしても、同じように撮れることはまずないと思う」