「さすがに“鉄拳制裁”などというのは、いまの時代ではありえませんが、野球部のなかには御大のイズムが今でも生きています。とくに御大が言っていたのは“人間力野球”という言葉です」
野球の技術面では、戸塚俊美助監督を中心に、福王昭仁氏(元読売ジャイアンツ)、広沢克実氏(元ヤクルトスワローズなど)、前監督・善波達也氏など強力なOB陣がバックアップする。だからこそ、監督はそれ以外の面のサポートに注力しているという。田中監督にとって「人間力野球」とはどういうことなのか。
「たとえば今年の六大学野球は無観客で開催され、相手チームのベンチでの会話が漏れ聞こえるほど静か。そうした時に、ベンチにいる選手たちのマナーが問われます。プロ球団のスカウトも、フィールドの外で見られる普段の人柄を一つの評価軸にしているようです」
サッカー部もここ数年絶好調だ。05年に関東大学サッカーが現行の12チーム制になって以来、1部リーグ在籍を保ち続けている。19年、主要タイトル3冠(総理大臣杯、関東大学リーグ1部、全日本大学サッカー選手権大会)を達成。20年にはリーグ戦の連覇を果たした。
監督を務めるのは栗田大輔氏。15年に監督に就任し、清水建設の社員として働く傍ら、サッカー部の指導にあたる。ジュニア育成クラブの代表という顔も持ち、ビジネスマンとしての経営哲学も取り入れる多角的な指導が特徴だ。栗田監督は、OBのプロ選手たちの活躍をこう見ている。
「サッカー面に加え、より人間的な面を強化し、組織づくりをしたことの結果が出てきたのだと思います。明治のサッカー部には、能力の高い選手が入学してきますが、その選手達が毎日を全力に取り組み、自分と向き合いながら追求しています。他大学は部の中でトップチームとセカンドチームがはっきりと分かれている場合もありますが、明治は常に競争が働いており、伸びてきた選手はトップチームに上げて試合に出ます。プロに行ったOBの中にも、3年生までセカンドチームにいた選手も多くいます。後輩もそういった状況を見ているので、『チャンスはいつでもある』ということがモチベーションになっているのだと思います」