栗田監督は、長友佑都を指導した元総監督の井澤千秋氏、前監督・神川明彦氏らが掲げた「サッカー部は人間形成の場」というコンセプトを継承している。サッカーには技術的な側面だけでなく、人間的な側面が必要という考えだ。栗田監督は例として、困難に当たったときの自己解決能力や自己修正能力を挙げる。

「自分を変えていく思考があると、成長速度が加速します。4年間過ごす中で、自分はプロに行けるのかそうでないのかなど、自分を見つめなおしたり、課題を見つけたりする。その結果、本質を見抜くための考え方や、考えを修正していく力が身についていく。こうした考え方を学ぶことでトータルの人間力が高まる。それが明治の特徴だと思います」

「人間力野球」を受け継ぐ野球部と、「考える力」を強調するサッカー部。明治大のスポーツの特徴はスポーツの技術的な面以外のところにあるのかもしれない。前出の西山スポーツ推進副本部長はこう話す。

「スポーツ推薦で入学する学生にも高い学力を求めています。現場からは『学力に関係なく強い選手が欲しい』という要望もあるかもしれません。しかし各学部からは『うちは最低これぐらいの英語力がないと授業についていけない』『理系学部なので数学も身についていなければならない』などの考えがあり、厳しいハードルを課しています。総合人間力の育成のためには譲れない点です」

 野球部の田中監督もこう話す。

「単位の取得状況がよくない学生はベンチに入れません。これは監督に就任した20年から口を酸っぱくして言っていることです。毎年1月は、試験勉強やレポートの提出などに追われることもありますから、なかには練習を休ませて学業を優先させたこともあります。入学前の高校生にも、うちは学業に影響が出るような練習はしない、野球だけを目的にしてもらっては困る、と伝えています」

「技術力を支えるのは、人間力」と両監督は異口同音に語った。ランキング1位は、長い間積み重ねてきた“明治イズム”のたまもののようだ。

(文/伊波達也、白石圭)