■まわり道をする旅に意味がある
「1度挫折して諦めたチャンスが戻ってきた。これはもう人生をかけて行くしかないということで、04年5月、イリーに住むカヌーの達人といっしょに、地球上に二人ぼっちみたいな旅に出るんです。それがぼくの復活の旅になった」
翌年、大竹さんのデビュー作「たくさんのふしぎ ノースウッズの森で」(福音館書店、05年9月号)が発刊された。そのページを開くと、今回の作品展のまさに原形を見る思いがした。
展示作品にはカヌーにキャンプ道具を積み、森の中にわけいっていく旅の魅力や、何千年も前から狩猟採集を営んできた先住民の生活や文化も盛り込んでいる(土門拳賞の審査では「見る側も旅をして移動するような新鮮な感覚を覚えた」ことが評価されたという)。
実をいうと、いまだ大竹さんはオオカミにほとんど出合えていない。
「でも、究極的に、いつもぼくの頭上に星のように輝いている、それがオオカミなんです。それを目標としながら、まわり道をする旅に意味があるんじゃないか、と。その途中でさまざまな野生動物や自然と出合ったり、先住民の暮らしが見えてきた。そうやって、もがいて、ようやくここにたどり着いたんです」
(文=アサヒカメラ・米倉昭仁)
【MEMO】大竹英洋写真展「ノースウッズ-生命を与える大地-」
ニコンプラザ東京 THE GALLERY 4月27日~5月10日、ニコンプラザ大阪 THE GALLERY 5月27日~6月9日