クラダシ社長/関藤竜也さん/1971年大阪府生まれ。大手総合商社で鉄鋼、外為、アパレルなどに携わる。戦略的コンサルティング会社取締役副社長を経て、食品ロス削減をビジョンに掲げ、2014年に「クラダシ」を設立(写真/本人提供)
クラダシ社長/関藤竜也さん/1971年大阪府生まれ。大手総合商社で鉄鋼、外為、アパレルなどに携わる。戦略的コンサルティング会社取締役副社長を経て、食品ロス削減をビジョンに掲げ、2014年に「クラダシ」を設立(写真/本人提供)

 約1500の登録店舗はコロナ禍で大きな打撃を受けている。外食業者を支援するため食品ロスに限らず出品できる期間限定サービスや、生産者と消費者を直接結ぶサービスも本格稼働した。川越さんはコロナ禍を経て、「食品ロスへの意識は高まった」と感じている。

「クラウドファンディングの支援実績がコロナ禍で急伸しているのと同様に、ストーリー性と社会的意義のある商品を応援したいという消費者の意識はこれからも加速していくと思います」

■大量廃棄を目の当たり

 食品ロス削減をうたう通販サイトはこの5年ほどで急増している。中でも、2015年にいち早く開設したのが「クラダシ」(東京都品川区)だ。

 サイトの登録会員数は約20万人。これまでに850社以上の5万品余の余剰食品を販路に乗せ、1万トンを超える食品ロス削減に寄与した。先駆的なビジネスモデルが評価され、「食品ロス削減推進大賞」の消費者庁長官賞など数々の受賞歴を誇る。

 創業のきっかけは、関藤竜也社長(49)が総合商社の中国駐在員として勤務していた1990年代末にさかのぼる。

 当時、工賃が安い中国にさまざまな原料が送り込まれ製造加工されていた。高い精度と品質基準が求められる日本の仕様書の要件を満たしていない「規格外商品」も発生していた。まだ「フードロス」という言葉にも馴染みがなかった時代だ。それでも、食品の大量廃棄が常態化しているのを目の当たりにし、いずれ地球規模の問題になる、見過ごせない、と関藤さんは思った。

 食品ロス削減をビジネスとして成立させるにはどうすればいいのか。考え抜いた末にたどり着いたのが、売り上げの約3%をプールし、環境保護団体やフードバンクなどに寄付する「社会貢献型ショッピングサイト」というビジネスモデルだ。

 メーカー側は格安販売でブランド価値が損なわれるのを嫌い、余剰商品の転売を避け、廃棄に回すことも多い。そこでクラダシは、通常取引に影響を及ぼさない「1.5次流通市場」を形成。「社会貢献」という新たな付加価値の提供と、国連が提唱するSDGsの理念や目標にも合致する企業価値の向上を実現している、という。

 とはいえ、創業時はわずかな加工品しか仕入れることができなかった。通販サイトでの販売と寄付の実績をこつこつ重ね、信頼を獲得していく過程で、協賛企業と取扱品目を増やしていったのだ。

 新型コロナの影響を受けた昨年は、会員数が前年比1.5倍以上に伸び、取扱商品も前年比約1.8倍に増加。21年6月期の売上高は前期比2.5倍の見通しだ。関藤さんは今後も協業と支援の輪を広げていくという。

「コロナ禍でピンチに陥っている個人営業の飲食店にも食材を卸すシステムを検討中です。原価安で仕入れて利益担保につなげてもらう形で支援したい」

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高級チョコの余った製菓材料から独自に…