乾物は切り干し大根、乾燥まいたけ、乾燥わかめ、乾燥ひじきなど。最近はそれに加えて、乾燥野菜も加えるようになった。ベランダで干して自作すればいいのかもしれないが、うちの周辺は野鳥が多く、食べられそうなものがあると、すぐに見つけて飛んでくる。以前、生椎茸をたくさんいただいたので、平たいざるに入れてベランダで干していたら、なぜかうちのネコがその上に寝転がって昼寝をしたため、すべてだめになってしまった。

 そのような事情のため、今のところ自家製は無理なので、近隣のスーパーマーケットの乾物売り場で売っているものを買っている。白菜、人参、小松菜、キャベツ、レンコン、ゴボウなどで、キャンプの調理の際に使う人が多いと聞いた。家族で毎日使うとなると、割高になってしまうから使いにくいかもしれないが、ひとり暮らしの保存用乾物としてはちょうどいい。その他、香味野菜入りと、アンチョビとにんにく入りのトマトソースの瓶詰めをそれぞれ二個ずつ。肉、魚、野菜などすべての料理に使いやすいので常備している。

 いくら乾物が便利といっても、食べる習慣がなかったら、急にそういわれても戸惑うだけだろう。乾物をストックしておかなくても、室内に幽閉されているわけではないので、ちょっと外に出れば、いくらでもお惣菜が買える。ただし何らかの事情で、流通ルートが途絶え、カップ麺も菓子パンも買えなくなったらどうするのだろう。大変だが、せっかく今まで経験したことがない出来事のなかにいるのだから、自分が生きるための食事について、考えるといい。見てはいけないと思いつつ、前を歩いている人のレジ袋に目をやると、お弁当をたくさん買っている人も多い。あんなに買って、どうするのかと前出の友だちに聞いたら、そのまま冷凍庫で保存して、食べたいときに電子レンジにかけるのだと教えてくれた。

 週に一度の外出日、電車に乗っていたら、乗り込んできた若い女の子が、右手にメロンパン、左手に500ミリリットル入りのコーヒーを持っていた。どうするのかと見ていたら、座席に座ったとたん、おもむろにそれらを食べ、飲みはじめたのである。ふだんでさえ、電車内の飲食については、衛生面ってどうなの? と疑問を持っていた私だが、この感染症の脅威が叫ばれているときに、よく車内で飲食できるなあと、びっくりしてしまった。食を気にする人、気にしない人、本当に人それぞれだと、日々、驚かされているのである。

※『一冊の本』2020年5月号掲載

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