殴られた勢いで吹き飛ぶ男。地面に沈み、死んだように動かない男。実際、死者が出ることもあるという。

 祭りというのは「神事」であるが、そのイメージとはあまりにもかけ離れている。

「思い切り殴り合うことで血を流し、その血を大地の神、パチャママに捧げているんです」

 神のためであるからこそ、決して遠慮などしてはならない。彼らは信仰に忠実に生きる証として力いっぱい殴り合う。いやはや、世界は広いというか、壮絶な祭りがあるものだ。

きちんと手順を踏むことで気持ちよく撮影する

 最近は火祭りや裸祭りなど、国内の祭りの取材を続けている。

 祭りを撮影する前には必ず、下調べをするほか、保存会などの団体に連絡して撮影のルールを教えてもらう。

「(神域など)絶対に入ってはいけない場所とか、ストロボを焚いてはダメとか、教えてもらえます。そのほうが気持ちよく撮影できますし、ダメならダメで別な方法をあらかじめ考えられますから」

(文・アサヒカメラ 米倉昭仁)

【MEMO】甲斐啓二郎写真展「骨の髄 Down to the Bone」
大阪ニコンサロン 7月9日~15日、銀座ニコンサロン 8月26日~9月8日。会場では同名の写真集(新宿書房、幅257ミリ×高さ250ミリ、132ページ、5300円+税)も販売する。