「ラーメン屋に行くと、味の分析を始めてしまうんです。職業病ですよね。そうなると“食事”じゃなくなる。本来の食事を楽しみたいので、あまり行かないようにしています。学ぶなら他の料理からと思っています。それでこそ、新しいものができますよね」(沖崎さん)
ピンチのときでも信念を貫き通した沖崎さん。すると、少しずつSNSなどで口コミが広がり始める。リピーターも増え、売上はオープン時の4倍になった。今やラーメン激戦区を牽引する人気店だ。
「中村麺三郎商店」の中村さんは、沖崎さんが将来の目標だという。
「独立する前から可愛がってくれる先輩で、真っ直ぐでブレないところに憧れます。自分のラーメンに凄く自信があるんだと思います。食べ歩きも全然せず、自分のラーメンだけに向き合い続ける。ブームにも一切興味がない。堂々としていて、自分も歳を重ねたら沖崎さんのようになりたいですね」(中村さん)
沖崎さんも、中村さんの技術を高く評価している。
「お互いがラー博にいた時代に知り合いましたが、中村君は技術があるのにおごりがなく、素直です。もともとの性格は大ざっぱで、昔は味がいきすぎたこともあったと思いますが、彼は一般の目線に近くてニーズを汲み上げる力がある。わかりやすく伝わる味を作っていると思います。若い人がどんどん立派になっていくので、自分も頑張らないといけないですね」(沖崎さん)
ラー博で出会った二人が、独立しても同じ神奈川エリアを引っ張っていく。それぞれ十分すぎる経験をラーメンに落とし込みながら、今日も最高の一杯を提供し続けている。(ラーメンライター・井手隊長)
○井手隊長(いでたいちょう)/大学3年生からラーメンの食べ歩きを始めて19年。当時からノートに感想を書きため、現在はブログやSNS、ネット番組で情報を発信。イベントMCやコンテストの審査員、コメンテーターとしてメディアにも出演する。AERAオンラインで「ラーメン名店クロニクル」を連載中。Twitterは@idetaicho
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