なかでも好きなのは編集作業だという。
「編集しているときがいちばん楽しいですよ。この作業を人にまかせる人の気が知れない、と思うくらい。イントロがあって、盛り上がりがあって、次への伏線があって、また盛り上がって、終わっていく、みたいな」
編集というのは作品を選び、どう並べるかを決める作業である。尾仲さんの場合、まず、おおまかに選んだ写真をコンビニエンスストアのコピー機を使って写真集の掲載サイズ、もしくは小さめに刷る(下の写真)。
「それをどこか旅館とかに泊まって、床にばーっと並べて組んでいくんです。そういうときくらい、こういうところに行ってみたい」(笑)
組んだ写真は束ねて、隅をクリップでとめて持ち歩き、何回も見直すことで組み方を追い込んでいく(下の写真)。
「それが写真集の元になるわけです」
編集のコツを聞いてみると、「強い写真ばかり入れちゃうと、見る側がつらいんですよ。その間に『抜ける写真』が入っていないと。傑作ばかりを入れちゃうとダメですね。でも、自分の写真はかわいいから、あれもこれも、となってしまう。すると、なんだかわからない、写真集の体を成さないものになってしまう。客観的に自分の写真を見ないと。あと、組んだ写真をしばらく見ないで『寝かす』ことも大切です。時間を置いてから見ないとね」。
売れ残る写真集は「ないです」
ちなみに、写真集を出すということは、自分の作品の価値を世の中に問う、ということである。
「写真集をつくった後で、どれだけの人に渡るか。だから売ることを考えなくては。もちろん、『人に配るんだ』という人はそれでいいと思うけれど、立派な写真集だとなかなかそういうわけにはいかないでしょう」
尾仲さんの場合、まず写真展やブックフェアなどの会場で写真集を「手売り」する。
ブックフェアは国内外で数多く開催されているが、特に海外の場合は旅費や宿代がそれなりにかかる。そうまでして海外で写真家自らが写真集を売るメリットは何だろうか。
「わかりやすく言えばファンをつくりにいくんです。写真家が行って、こういう作品を撮っているんだ、ということを知ってもらう。その写真集を誰かが買って、また誰かに見せるわけじゃないですか。そうやって作家活動を広めていく」
実際、そうやって広がったファンの輪によって海外で撮影する際にさまざまな手助けを受けられるようになった。
「毎年パリに行くと、ファンはぼくがそこにいるということを知っているから、会いに来てくれて、写真集を買ってくれる。そういう人がいっぱいいてくれればいいわけです。(飛行機の荷物料金が加算されないように)写真集の重さをきっちりと量って、持てるだけ持っていきます」