新聞の校正作業。確認作業をしたり、タイトルやレイアウトを変えたりすることもある。みな集中しているので編集室は静か。編集部員は8人
新聞の校正作業。確認作業をしたり、タイトルやレイアウトを変えたりすることもある。みな集中しているので編集室は静か。編集部員は8人

■不登校の不安や焦り、やり過ごすのがゲーム

 押井に会い、「俺もひきこもっていたけど世の中面白くなって外に出た」という話を聞いたあとの飲み会で、ひきこもりから脱出するきっかけをつかめた。石井が場を和ませてくれたので、鬼頭はいろいろな人と話すことができた。働いていない人もたくさんいて、自分もここにいていいんだと、肯定された気持ちになれたのだ。鬼頭は今、不登校新聞のWEBマガジンスタッフを務める傍ら、バーを営む。石井は言う。

「一人じゃないっていう感覚は大切だと思います。私もフリースクールに行ったとき、こんなに不登校の人がいるのだという発見と同時に、いろんなロールモデルがいて、生きていくエネルギーが湧いてきて、活路が広がる感じがしましたから」

 06年、編集長に就任。いまはメディア対応や講演なども業務に加わる。6月9日、名古屋市内で行われたシンポジウムに出席する石井に同行した。

 テーマは「子どもが不登校になったとき」。一通りの発言が終わり、会場からの質問タイムに。不登校後の進路について、石井は「さまざまな選択肢がある」と話した。最近は不登校対応の通信制高校に進む人が多く、不登校者の高校進学率は85%。それ以外では高認を受けるパターン。いずれも大学や専門学校に進んだり、就職したりする。学校に進まないケースはかなり少ないという。

 会場が沸いたのは、「子どものゲームにどう対応すればよいのか」と質問されたとき。無類のゲーム好きである石井は「これを話すために名古屋に来ました!」と笑いをとりながらこう訴えた。

「ゲームは“命の浮輪”。取り上げないで」

 理由はこうだ。学校に行かずにいると、不安や焦りが押し寄せてくる。石井は学校に行かなくなって間もない頃、部屋から時計を処分したという。友だちがいまどんな授業を受けているかを気にしないためだった。一日中悩んでいたら、壊れてしまうから、やり過ごすために使うのがゲームだという。雑念を排除した上で、自分は何に対して不安を抱いているのかといった問題と向き合い、気持ちを整理する。傍からみると時間が止まっているように見えるが、実は成長している……。

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