『アサヒカメラ』2019年12月号では「動物写真の世界へようこそ」と題し、動物写真の撮り方を75ページにわたって大特集!「シーンごとの最適なカメラやレンズ構成」「絞りやシャッター速度、ピントの合わせ方」といった初心者向けの基本のテクニックから、「背景の扱い方や画面の切り取り方」そして「動物と対峙する姿勢やマナー」までを、第一線の動物写真家たちが教えてくれました。
【いわゆる「飛翔写真」。野鳥は風上に向かい離着陸するため常に風向きと光線状態を意識する。作例はこちら!】
前回の記事「02野生っぽさを写し出す 動物園での撮影術」に続き、今回は写真家・中野耕志さんが指南する「野鳥の撮影テクニック」を紹介します。
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■野鳥写真の基本
野鳥写真は、数ある撮影ジャンルの中でももっとも難しいものだといっても過言ではない。野鳥は容易に接近できないことから、撮影者の思い通りに撮れることのほうが少ないためである。
そして「標準レンズは800ミリ」ともいえるほど撮影機材のハードルは高く、体力的にも財力的にも厳しい世界なのだ。しかしその難しさゆえに理想のショットが撮れたときの喜びが大きいのも事実だ。
野鳥写真の代表的な作画スタイルは、図鑑写真、飛翔写真、情景写真などがある。その他にも採餌や繁殖などさまざまな生態写真もあるが、今回は基本中の基本をおさらいする。
カメラ設定が関わる部分の撮影手法としては、基本的に2通り。野鳥が止まっているか、野鳥が動いているかである。野鳥が止まっている場合のカメラ設定は、ISO200~400程度の低めのISO感度で高品位に仕上げるのが基本。
野鳥が動いている場合、すなわち飛翔写真のカメラ設定は、シャッター速度を1000分の1秒以上に速めて動体ブレを防ぐのが基本だ。AFモードは前者がシングルAF、後者はコンティニュアスAFが適している。
この2通りの基本設定を、被写体の状態に応じて素早く切り替えられるようにしておきたい。筆者が考える良い野鳥写真とは「野鳥のモデルとしての魅力」「野鳥の存在感を妨げない背景」「良好な光線状態」の三つの要素がそろっていることだ。そして野鳥が持つ魅力が素直に表現されていることである。