「作ってもらった食べ物に対して、文句をいうほうがおかしいわよ。食べられないほどまずいわけじゃないんだから」


「ごった煮、一緒くたに炒めたものを前にすると、餌みたいでげんなりする」

 それ以来、ずっと夫の菓子パンデザートは続いている。

 その話を聞いて私は、

「こういったおかずを食べたくない気分っていうんだったら、リクエストしてくれればいいのにね。昼に食べたものを教えてくれるだけでも参考になるから、頼んでみたら」

 と彼女にいったら、

「そういうことはしたくないらしいです」

 と表情が硬い。彼女は専業主婦で日中は1人で家にいる。

「それじゃあ、さつま揚げと野菜炒めを別にしてお皿に盛るとか、盛りつけを少し考えるとか、そういう希望があるのなら、ちょっとくらい手間はかけてもいいんじゃないの」
「でも洗い物が増えるし。彼が食器を洗ってくれるのならやりますけどね」

 他人様の家の問題なので、あとは夫婦で話し合って決めてもらうしかないのだが、明らかに食を握っている彼女が強気だった。それから彼女も少し考えたらしく、1品だけお惣菜を買ってきて、それをパックのままではなく、皿にのせて出すようにしたら、だんだん彼も文句をいわなくなったという。それで夫婦仲が丸く収まるのであれば、それでいいのである。

 先日、ラジオを聴いていたら、結婚して50年の男性からの投稿があり、それは、

「妻の料理がまずくて仕方がない」

 といった内容だった。せっかく彼女が作ってくれているのだから、文句をいうのは悪いと、50年間、ずーっと耐えてきたのだという。こうなると味付けがどうのという問題ではなく、もともとの夫婦の味覚が違いすぎるのだと思う。私は結婚した経験がないのでわからないが、最初はどの夫婦も育ってきた環境が違うので、なじんだ味も違う。だから妻の作る料理がおいしいとか、まずいとかいった感想になるのだろうが、それに折り合いをつけていって、その家の味が出来上がるのではないだろうか。

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