その奥さんもちょっと手抜きをして、主菜になるお惣菜を買っていたら、そんなふうにならなかったかもしれない。それほどまずいのなら、調理に慣れた他人が作ったもののほうがましだろうから、手作りの料理がまずくても、1品、食べられるものがあれば、それで何とか食事は成り立つ。私よりも上の世代の方なので、妻の勤めとまじめに料理を作っていたのが徒になったようだった。老齢の夫婦2人暮らしなのだから、生活のなかでマイナスな気分になるものは、なるべく排除したほうがいい。

 食事を作る人の立場もいろいろとある。働いている母親だから作らないわけではなく、専業主婦だから作るというわけではない。そして作る料理がどれもおいしいとは限らない。母親ではなく父親が料理を作る家庭も増えてきた。知り合いの編集者には幼い子供がいて、毎日、料理を作るようにはしているが、おかずの品数が足りないので、1品、お惣菜を買って帰る。自分が作るよりも味が濃いのはわかっているのだが、子供は彼女が作った料理よりも、その味が濃いお惣菜を好んで食べるのだそうだ。

「それが困るんです。でもどうやって味を調整していいかわからなくて」

 それを聞いた私は、

「市販のお惣菜は味付けが濃いし、油分も多いから、そのお惣菜の中に入っている野菜の量を増やすようにして、さっとゆがいただけのものを足してみたら」

 といってみた。

 私も以前、どうしても酢の物を食べたくなったものの、家には酢がないという状況で、タコ、キュウリ、ワカメ、長芋が入った、1人用パックを買った。きっと味付けが濃いめなのだろうなと、保険で長芋を買って帰った。家に帰って味見をしたら、やはりそうだったので、長芋をお惣菜の中身に合わせて細切りにして混ぜると(それも結構な量だったが)、何とか好みの味になった。

 食事の助っ人としてのお惣菜の濃い味を調整するのはどうしたらいいのかなと、それからあれこれ考えてみた。いちばんいいのは野菜と混ぜることだろうが、蒸すのは手間だろうなと思っていたら、うちにはないけれど、ほとんどの家には電子レンジがあるので、それでチンすればいいのだと気がついた。私は野菜炒めのときに水分が出てくると、常備している乾燥湯葉や乾燥エノキなどの乾物を投入して水を吸わせたりしているが、味を薄めるにはあまり役に立ちそうもない。油は使いたくないので、野菜を水炒めして、それを加えても何とかなりそうだ。中華風のお惣菜だったら、レンジで豆腐を水切りし、それをカットして混ぜてもいいかもしれない。

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