しかし私は家族のために料理を作っていないので、知恵がわかない。そこでフルタイムで働いていて、周囲に食事をする場所がない研究者の娘さんのために、毎日お弁当を作り続けている料理好きの友だちにその話をしたら、

「春雨がいちばん手っ取り早いわよ。ハンバーグのような洋風お惣菜には向かないけれど、和食と中華にはいける」

 と勧めてくれた。彼女は仕事から帰ると、まず湯を沸かすのだという。調理の途中で湯を沸かさなくちゃとか、あれが足りないから用意しなくちゃと考えると、さあ、晩御飯を作るぞと勢いがついていた気分が、料理好きな彼女でさえちょっと落ちるのだという。そして湯が沸くのを待っている間にも、徐々にやる気が失せてくる。

「疲れているし、晩御飯はがーっと勢いで作るしかないのね。だから湯を沸かしておくと、調理の流れが中断しないの。そのお湯で春雨をもどせば、2、3分で使えるようになるでしょ。それをお惣菜に混ぜればいいんじゃない。うちもお惣菜は買わないけど春雨は常備してる」

 お惣菜の味の調整のために、私はわざわざ長芋を買ってしまったが、春雨だったら腐る心配はないし、他の乾物よりも使いやすそうだ。すべてをお惣菜に頼るのではなく、頭を使ってお惣菜をアレンジするのは悪いことではない。それによって作る料理の幅も広がるような気がする。しかし私は文句をいわれる家族もいないので、細々と自炊を続けていくのである。

※『一冊の本』2018年12月号掲載

※本記事のURLは「AERA dot.メルマガ」会員限定でお送りしております。SNSなどへの公開はお控えください。

暮らしとモノ班 for promotion
若い人にも増えている「尿漏れ」、相談しにくい悩みをフェムテックで解決!