現場の好材料を積極的に取り込みながら、写真を面白くしていく浅田さん。群衆の肖像はなかなか難しいものだが。
「そうですね。人数が増えていけばいくほど、息を合わせるのは難しいです。セルフタイマーを使うので、シャッターを押して走り込んで立ち位置に行き、またカメラに戻る。撮れたな!というところにいくには枚数が必要で。でも結局いいのは一枚しかないんです。それが面白くて、ホント、不思議なんですが、4人で撮っていたときから変わらないですね」
どちらも捨てがたいというような写真が何枚か撮れることにはならないそう。一枚の最良を求めるとそうなっていくのだろうか?
「構図はあまり変えないですが、何かをちょっとずつ変えていきます。もう少し寄る、少し角度を変えるなどですね。ポラロイドは使わないので、ファインダーをのぞきながらですね」
これは驚き。撮れた感触はアガリを見ずともわかるそう。
「空気感で、ほぼいいのがいま撮れているな、というのがわかるんですよ。たまに兄ちゃんがのぞいてくれて、いまいいんじゃない?なんて、言ってますけどね(笑)」
■「記念写真は作品であり思い出。まったく無駄にならない」
「どんなポーズをするか悩みますよね? それがしっくりいかなくて2、3枚撮ると、もういいでしょ?という空気になる。たとえば、子どもがいたらポーズの提案をしてもらうのもいいです。ふつうは撮る人が指示すると思うんですが、それを被写体の誰かにふって意見を出してもらい取り入れるようにすると、みんなの意識が高まってくるんです」
撮影者がすべてをコントロールしようとしないほうが逆にいいものになる。何人かの意見が交わると、そこにオリジナリティーが出てくるのだ。では、それぞれの人物をいかにもり立てるか。
「今は日本各地で地域の人々を撮影する機会が増え、その場合はデジタルでも撮ります。モニターで見せるとやる気が変わってくる(笑)。3歳の子どもでも、気持ちは変わりますね。実際盛り上がって撮影していても、画面を見てみると顔が楽しそうじゃない。見せるとそこがよくわかる。それで参加意欲と集中力がグンと増します。そこは撮る、撮られるの関係ではなく、みんなのいい作品を撮る意識がまとまってくるんですね」
■撮影で気持ちをそろえていく
「よくある集合撮影のパターンは4、5枚で終わらなくちゃいけないという感覚。どうにも粘れないんですよね。そこを超えて、何回も繰り返すとハイになる瞬間がくる(笑)。そこまで到達すれば、最高の一枚を撮りたいからみんなで盛り上がっていこうぜ!みたいに気持ちがそろってくるんです」
ホットに楽しくが浅田流。誰もが、やってよかったと思う撮影がつねにベースにある。
「撮り始める前に今日は1時間ぐらい撮るよーとか言っておいたほうがいいですね。それはとても重要です。さもないと、撮影がうまく進んでないから時間がかかっているのかな?なんてムードが暗くなってくる。だけど100枚撮るからと伝えておくと、みんながその意識で臨みます。前向きな共通認識をもつと、写りが大きく変わりますね」