出演メンバーはすべて自分とその家族。浅田政志さんは、リアルと空想を行き来しながら家族の肖像をずっと撮り続ける写真家だ。
もっとも身近な存在をいかに撮り続け、どのように発表し続けるのか?
その浅田流のアプローチから家族写真の極意を学ぶ。
「こんな未来の家族があっても面白いんじゃないか、というのが『浅田家』です。当初は家族の思い出の再現からやり始めました。でも早々にネタが尽きて。それで思い出だけでなく想像を取り入れるようになったんです」
アイデアを凝らした家族写真を作りあげるスタイルをはじめたのは、浅田さんが20歳のとき。
「両親と兄と僕、4人ではじめたのですが、兄が結婚し、僕が結婚し、子どもが生まれ家族がどんどん増えました。その家族の変遷をしっかり作品で残したかったんです」
選んだのはペンタックス67II。セルフタイマーつきの中判カメラは貴重だ。絞りはあまり開けず、絞り切ることもしないそうだ。
「基本はISO400ですごく晴れたらISO160。三脚につけますが、ミラーアップしシャッターショックを避けてセルフタイマーで撮ります。家族に動いてもらったり、声を出してもらったりするので」
とかく撮影はあるがままがよしとされるが、浅田さんはセットアップで撮る。しかもできるだけリアルに。
「思い描いたフォーメーションでやってみて撮れたかな?というのがスタート。それから最高にいいのを撮る!と作りこんでいきます」
浅田さん流の真骨頂は、よりいいものを作ろうとするポジティブな粘り。その熱は確実に画面に反映されていく。
■生っぽさを大切にする
「現場では家族の掛け合いもあれば、そこでしか出てこないアイデアも生まれます。実際に撮っている時間も大事にしたいです。そこが思い出に残るところなので」
準備と現場の割合は5対5ぐらい。セットアップだが生っぽくて、つかみきれないことが面白いと浅田さんは言う。
「バンドの写真は、場を貸してくれる人がそばで見てました。どうやったらいつもの感じ出ますかね?なんて聞いていって。やってみるとこっちのほうが面白いかなとか、いろいろ試していくんですね」
「エコー」という作品を例にすると、「その頃、義姉さんのおなかには本当に赤ちゃんがいて定期検診に通っていました。バンドの写真はぜんぶつくりものだけど。ここでは虚実をとりまぜて作りたくて。母親が病院で働いているので場所と服と機械を準備してもらって。機械は置いてあるだけでいいと思っていました。でも現場で急に映してくれることになって、モニターに赤ちゃんの要素が映っていたりすると、みんなの表情がもうぜんぜん違う。何より自然な笑顔を出すのって、すごく難しいんです。これはまさに5対5ですね」