国内外の人々を惹きつけてやまない京都。その四季折々の魅力を、京都在住の人気イラストレーター・ナカムラユキさんに、古都のエスプリをまとったプティ・タ・プティのテキスタイルを織り交ぜながら1年を通してナビゲートいただきます。愛らしくも奥深い京こものやおやつをおともに、その時期ならではの美景を愛でる。そんなとっておきの京都暮らし気分をお楽しみください。
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■初夏に訪れたい、本が似合う喫茶と快適読書時間
蒸し暑い京都の夏の始まり、陽射しがじりじりと照りつけるような日や雨が降る日は、ひんやりとした部屋の中で、本を読みながらのんびりしたくなります。思い出すのは、小学校の初夏の夕暮れ時、木造校舎のほの暗い図書室、ギシギシとなる木の床、古い紙の匂い。窓際の隅っこの席に座り、誰にも邪魔されることなく本を開く時の安らかな心持ち。その頃から本に囲まれる空間は、たまらなく好きです。JR二条駅の裏側の路地、町家が軒を並べる一角にある喫茶店「雨林舎」は、その時の感覚を思い起こさせてくれます。町家のほの暗さと緑があふれる小庭へと吹き抜ける風が心地良く、気取りない空間に読み込まれた本が並ぶ書棚。お気に入りの本を携えて、ふらりと立ち寄りたくなる場所です。今回は、京都の夏の始まりに味わいたいお菓子と共に、快適に読書時間を過ごせるアイテムをご紹介致します。
■白いポンポンをつけた帽子のよう 何度でも食べたくなるアイスクリームのせホットケーキ
「雨林舎」と言えば、ホットケーキの存在は欠かすことが出来ません。食べ終えた後から無性にまた食べたくなるのです。いつも揺るぎなさを感じる、しっかりとした気骨あるホットケーキ。それは、店主の奥田千帆さんらしさのようにも感じます。私にとっては頑張ったあとのご褒美のような存在で、少し元気がない時には、夢にまで現れます。この仕事が一段落したら、ホットケーキを食べに行こう…常々、頭の隅っこから離れない味です。普段は二枚重ねにバターとハチミツが定番ですが、暑い日にはバニラアイスクリームをのせていただきます。その姿は、まるで白いポンポンをつけた帽子のようです。熱々のホットケーキの上のアイスクリームがじわじわと溶けていき、生地に染み込んだ所を頬張ると、じゅわっとバニラとバターと粉の風味が広がり、何とも言えない幸せな気持ちに包まれるのです。