国内外の人々を惹きつけてやまない京都。その四季折々の魅力を、京都在住の人気イラストレーター・ナカムラユキさんに、古都のエスプリをまとったプティ・タ・プティのテキスタイルを織り交ぜながら1年を通してナビゲートいただきます。愛らしくも奥深い京こものやおやつをおともに、その時期ならではの美景を愛でる。そんなとっておきの京都暮らし気分をお楽しみください。
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■ほっこりくつろぐ京のお茶時間
ぐるりと山々に囲まれた京の街で暮らしていると、山は視界の一部となり、日々を楽しませてくれます。5月に入ると樹々が生茂り、淡い緑から少しずつ色濃くなり、山肌の表情もどこかきりっとしてくるようです。
新しい生活、環境が徐々に落ち着いたこの季節「ほっこりしいやぁ」と投げ掛けられる一言に救われることがあります。心にすっと入ってくるこの言葉の裏には「頑張りすぎてない?少し休憩したら?」という意味合いもあります。「お茶でも飲んで、ほっこりしよかぁ」は、日々の中で良く使う会話でもあります。そんなお茶の時間を一層楽しみにしてくれる道具や茶葉、お茶に合うお菓子を探す時もまた格別なのです。
■日々味わい、心を潤す 美味しいお茶の淹れ方を習う
京都御所より南へゆっくりと歩いていると、芳しい香りが風にのってふわっと鼻先をくすぐります。寺町通にて1717(享保2)年より、長きに渡り日本茶の魅力や文化を広めて来られている「一保堂茶舗」の喫茶室「嘉木」を訪ね、美味しいお茶の淹れ方を教わってきました。一番のポイントは、茶葉の量と最後の一滴まで注ぎきること。この一滴一滴に旨味が凝縮されていて一番美味しいところだそうです。ひと手間を惜しまず、教わった通りに丁寧に淹れたお茶を口に含むと、茶葉から沸き立つ華やかな香りや旨味の余韻がいつまでも口の中に広がり、身も心も潤い解きほぐされていくようです。この味、この感覚を日々味わいたいものですね。