熊本さんは心肺停止から回復後、バッグにお薬手帳やヘルプマークと一緒に、手製の「緊急カード」を入れて持ち歩いている。そこには、3匹の猫のことや緊急連絡先を記している。「対策に100%はなくても、100%に近づけることはできるはず。にゃんずのためにできることは何でもやっています」
フリーランスエディターの如月サラさんは、21年1月に熊本の実家にいた老猫4匹を東京に引き取った経験がある。
もともと保護犬猫を受け入れて世話をしていたのは80代の母だった。年老いて世話できなくなることを見越した母は、約10年前に新たな犬猫を迎え入れるのはやめて、いまいる猫だけを終生飼うことに決めたという。
しかし、20年夏に母が認知症で施設に入所。残された父が実家で猫と暮らしていたが、翌年1月に父が自宅で倒れて亡くなってしまった(詳細は『父がひとりで死んでいた』<日経BP>)。
「母も私も、先に猫や父を見送り、母が最後だと思っていたのに、そうはなりませんでした。母なりに猫のことを考えて10年前に新しい猫を受け入れるのをやめたのにこうなってしまったのです」
如月さんは、1匹ずつでもいいから知り合いや保護団体で猫を引き取ってくれないか手を尽くしたが、見つからなかった。
「保護活動をしている人に『熊本地震や災害で迷子になった犬猫が多く、どの団体もいっぱいなんです』と言われ、その現実を受け入れました」
如月さんは東京で猫2匹を飼っていたが、実家の4匹を自宅に連れ帰って世話することを決意。
「みんな10歳を超えていましたが、健康診断では問題ないということで、連れてきました」
しかし、うち1匹が重い腎臓病にかかっていることがわかり、今年6月に最期を看取った。
「大変だし、お金もかかったけど、両親がかわいがっていた猫を引き取ったのはよかった。私も一人暮らしなので、信頼できるペットシッターさんに鍵を預けています。もしもの時や高齢化への備えは、猫を飼う私たちにとって大切な課題。正解はないと思うけど、模索しながら考えていくべきではないでしょうか」
(ライター・吉川明子)
※週刊朝日 2022年12月23日号(2023猫カレンダー付き)