「飼い主が終生面倒を見るのが一番なので、もしものことがあって『この手帳が役に立ちました』というお声はできれば聞きたくありません。でも、『外出時に気が楽になった』という声をたくさんいただき、不安を抱えていた人は多かったことに気付かされました」
手帳は体重や日頃の様子など、成長記録を書くページもあり、楽しみながら記入できる。ただ、手帳の存在に気付いてもらえなかったら……。そこでオキさんは、日々の猫の様子を投稿でき、数日投稿が途絶えると登録しておいた家族や友人に通知するようなアプリを作れないか考えている。
「飼い猫の写真を投稿するのは楽しいし、記録にもなります。また、見ている方も楽しいはず。普段は楽しく使えて、いざという時に役立つアプリを作るのが目標です」
医療ライターの熊本美加さんは“もしもの時”に遭遇した一人だ。
一人暮らしで3匹の保護猫を飼っていたが、2019年11月、山手線に乗車中に突然、心肺停止で倒れ、救急搬送された。懸命な救命措置のかいあって一命をとりとめたが(詳細は『山手線で心肺停止!』<講談社>)、そのままリハビリまで約2カ月間入院することになった。その間、3匹の猫の世話をしていたのが、「猫互助会」のメンバーだった。
「猫飼い仲間4人で結成した会で、お互いに合鍵を託し、不在の時に面倒を見たり、猫を看取る時に支え合ったりしていました。妹がメンバーと交流があり、私が心肺停止した当日にみんなが集まり、その日から猫の世話をしてくれていました」
熊本さんは、妹とメンバーにつながりがあったことが幸運だった。互助会を作っていても、連絡が遅れたら手遅れになる可能性もあるからだ。
「退院後はマンションの理事になったり、地元の着付け教室に通ったり、ご近所とのコミュニケーションを積極的に持つようになりました。遠くの親戚より近くの知り合い。お互いが支え合える関係を築きたいと思ったからです」