店主の長崎康太さんは25歳の時、近所で美味しいと評判の本厚木「ZUND-BAR」で働き始めた。特にラーメンで身を立てたいという思いはなかったが、働いているうちにそのまま店長にまで上り詰める。次第に味づくりも任されるようになり、ラーメンを作る楽しさを覚えて、自分の味で独立したいという思いが湧き始めた。


横浜中華そば 維新商店/神奈川県横浜市西区北幸2-10-21 横浜太陽ビル、営業時間11:00~15:00、18:00~22:00 日曜定休(筆者撮影)
横浜中華そば 維新商店/神奈川県横浜市西区北幸2-10-21 横浜太陽ビル、営業時間11:00~15:00、18:00~22:00 日曜定休(筆者撮影)

 3年の修業の後独立し、2004年には後にビブグルマンを獲得する「麺や 維新」を神奈川県大和市で開業する。「鶏が好きだった」という理由で作ったのは鶏を使ったオリジナルのラーメン。自信を持って挑んだが、お客さんが1日10人という日もあり、大変苦労したという。当時はSNSもなく、ビラ配りなどで近所のお客さんを必死に集めた。しかし、思うように客足は伸びず、2006年に閉店した。最終日には150人のお客さんが駆け付け、「移転先が決まったら教えてくれ」と名前と連絡先を書いてくれた。

 休業中は一度ラーメンから離れ、居酒屋で働いた。2年後、今度は横浜の地で再出発。駅から遠いこともあり、人気に火が点くには時間がかかった。しかし、オフィス街ということもありリピーターが増加。開店1年で客足も増え始め、話題のお店となった。

 看板メニューは「醤油らぁ麺」。鶏ガラに昆布や秋刀魚節などを加えたスープが味わい深い。醤油ダレは生醤油を使用し、まろやかさと香りを見事に演出している。

麺や 維新「わんたん麺」(筆者撮影)
麺や 維新「わんたん麺」(筆者撮影)

 そして2013年、更なるステップアップをという思いで東京・目黒に移転を決意。流行り廃りの早い場所でいかに流されず、末永くやれるかという挑戦だった。東京への進出を前にして、横浜の店をセカンドブランドに業態変更することを決めた。それが「横浜中華そば 維新商店」だ。

「いろんな食材を使って作る『麺や 維新』のような店も必要ですが、一方で原点のようなラーメンを作ってみたいなという思いがあった。本来のラーメンってこういうものだったよな、とお客さんに思っていただける一杯を作りたかったんですよね。結果、自分の中でのラーメンの幅を広げることにも繋がりました」(長崎さん)

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「ラーメンはここまでできる」と証明