フィギュアスケートのGPファイナルで日本勢が3種目を制覇した。男子は宇野昌磨、女子は三原舞依、ペアは三浦璃来・木原龍一組がそれぞれ表彰台の頂点で輝いた。AERA 2022年12月26日号の記事から、ペアと女子シングルの選手の試合状況を紹介する。
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三浦璃来(21)、木原龍一(30)組が初の「世界一」へと駆け上がり、日本のペア史を塗り替えた。
オフシーズンに三浦が肩を痛め、復帰直後だったGPシリーズ2戦は自分たちの状態だけに集中した。今大会は昨季の世界覇者である米国ペアとの一騎打ち。木原はこう宣言していた。
「僕たちの世界での立ち位置を確認することになる」
SPは、初の大舞台を楽しむ2人が喜びを振りまくような演技だった。一方、首位で折り返したフリーは、「世界一」を目前に2人とも単独ジャンプでミスが出てしまう。
「僕たちが初めてプレッシャーと闘う大会。僕自身は8年ぶりに3回転サルコーをミスしてしまって、普段とは違う精神だと感じました」(木原)
■2人が失わないもの
しかし、どんな状況でも2人が失わないものがあった。
「プレッシャーはあっても、2人で滑る楽しさはありました」
そう感じていた三浦。木原も同様だった。
「僕たちは滑りのタイミングがすごく合うので、滑ることそのものに楽しさを感じることができる。そしてケガや自分に自信が持てないつらい時期を乗り越えてきた、その気持ちを共有できる。だから試合を楽しめる」
優勝が決まると、2人はポロポロと涙をこぼした。
「新しい扉を開くことができたのはすごくうれしいです。でも、歴代のメダリストには追いついていません。挑戦者の気持ちは忘れません」(木原)
女子で初優勝を遂げた三原舞依(23)も苦節のメダルだった。今季を前にこう葛藤していた。
「去年、五輪を2度目に逃した時はどん底でした。もう立ち直れない、スケートは好きなのに滑りたくないってなる日が続いて。本番だけミスした自分を責めて。友だち、家族、先生、ファンの方の励ましだけが支えで生きていました。でも、こんな経験をできるのもスケートをしているから。滑れることは幸せと考えて、ここまできました」