かるがもCPキッズのベビークラスのイベントで作成した「ごろんアート」の鯉のぼりです。一番下に赤ちゃんを「ごろん」と仰向けに寝かせて脚立の上から写真を撮りました(撮影/江利川ちひろ)
かるがもCPキッズのベビークラスのイベントで作成した「ごろんアート」の鯉のぼりです。一番下に赤ちゃんを「ごろん」と仰向けに寝かせて脚立の上から写真を撮りました(撮影/江利川ちひろ)

「インクルーシブ」「インクルージョン」という言葉を知っていますか? 障害や多様性を排除するのではなく、「共生していく」という意味です。自身も障害のある子どもを持ち、滞在先のハワイでインクルーシブ教育に出合った江利川ちひろさんが、インクルーシブ教育の大切さや日本での課題を伝えます。

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 すっかり春の陽気になりました。私が運営している脳性まひのお子さんとパパとママのためのNPO法人、かるがもCPキッズは、医療的ケアが必要なお子さんや低年齢のお子さんが多いため、コロナ以前から感染症や移動の負担を考慮して、基本的に1月から3月の寒い時期には対面イベントを行っていません。2019年までは、毎年4月にその年度の第1回目のワークショップを行い、12月のクリスマス会で1年が終わるというサイクルが恒例となっていました。

 4月のワークショップによく選んでいたのが、3歳までの障害のあるお子さんとパパやママを対象にした「ベビークラス」です。ここ数年はコロナ禍で行えない年が続いていますが、暖かくなるとお出かけしてみようと思うご家族も多かったようで、企画すると必ず満席になりました。私自身もとても大切にしてきたイベントです。

 今回は、コロナ後の再開を目指し、かるがもCPキッズのワークショップについて書いてみようと思います。

■孤立しがちな障害児ママ

 ベビークラスを始めたきっかけは、医療的ケア児の長女が未就学の頃に通っていた児童発達支援センターの担任だったユリ先生が、かるがもCPキッズの取り組みをメディアで知り、ホームページ宛てにメールをくださったことでした。長女が卒園してから数年の間に児童発達センターを退職し、当時は育休中とのことでした。一緒に働いていた先生とともに、何か協力できることはないか、と言って下さったので、新たなワークショップを始めてみようと思ったのです。

 生まれてきた赤ちゃんに障害があるとわかった時、パパやママの動揺や落胆は言葉で説明できないほど大きなものです。周囲に同じ環境の家庭がないことが多く、新米パパやママは相談場所を見つけられないまま、不安を抱えて孤立してしまうケースがよくあります。特に低月齢の間は、自宅と病院の往復だけしか外出しないこともあり、育児を中心に担うママたちは、社会から取り残されたような気持ちになってしまうのです。そのため、障害のある赤ちゃんを育てるご家族が集まる機会はとても大切です。

 集まってお茶会をするだけでも有意義だとは思いますが、療育の専門の先生が入ることによってアクティブな活動ができます。初回のワークショップのテーマは、「赤ちゃんと一緒にあそぼう!」に決めました。

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江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

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