
――克行さんとの関係について、お聞かせください。
夫が2000年の衆院選で2度目の落選をした後に知り合いました。実は結婚前から夫の家族と関係が作れず、結婚式の2日後に泣きながら九州の実家に逃げ帰ったこともありました。結婚ってなんてつらいことなんだろうと思っていましたね。すぐに広島に戻されましたけど、うつ病を発症し、その後20年にわたって治療を続けました。
夫の後援会や、夫の当選に対して責任を負っているんだという気持ちが強くて、とにかく我慢しなければと思っていました。政治家の妻というのは、すごく古臭い価値観の中にあって、自分もがんじがらめになっていました。
刑務所に入った夫の心を支えた
――案里さんは結婚後に政治家の道に進み、広島県議を4期14年以上務めた後、2019年に参院選に立候補し初当選。翌年に公職選挙法違反(買収)の容疑で逮捕され、案里さんは懲役1年4カ月執行猶予5年、克行さんは懲役3年の実刑判決を受けることになりました。栃木県内の刑務所に収監された克行さんに、広島県から往復7時間かけて面会に行っていたそうですね。
面会が許されるのは月に3回で、1回あたり30分。でも、夫が心の支えを失わないように通い続けました。
ヴィクトール・フランクルが『夜と霧』で描いたように、自由と人権を厳しく制限される施設にいるときには、自分がどのような人間になりたいか、そこを出た後にどう生きていきたいかというビジョンを持たなければ、自分を保つことはできません。