夫は安倍晋三首相の外交安全保障担当の補佐官を務めたことがあるんですが、議員活動で忙しく本を読む暇もなかったので、これを機にアカデミックな視点を持ってもらおうと、夫をとにかく勉強に追い立てました。国際政治の基礎的なテキストから、ギリシャ哲学、歴史書、海外の政治家の伝記、地政学、戦争学まで、思想を体系的に獲得できるように本を選び、2年ちょっとの間に800冊以上の本を送りました。

 私も拘置所に入っていたのでわかるんですが、すごく落ち着いて勉強できる環境なんですよ(笑)。夫も歯を食いしばって私のスパルタに耐えて……よく勉強していました。
 

――克行さんの面会に行くときは、どんな気持ちでしたか。

 それはもう本当に惨めで。最寄りの駅で降りて刑務所までのタクシーの車窓から見える風景が、夫の選挙区にそっくりで、泣けて泣けて……本当に悲しかったですね。そして、オレンジ色の囚人服を着て、丸坊主になった夫の姿に胸がえぐられるようでした。

 泣きたいけど涙を見せるわけにはいきませんので、面会を終えて家に帰ると、どっと疲れが出ました。
 

――案里さんにとって、克行さんはどんな人なのでしょうか。

 彼はもともと愛の深い人。そんな彼にとって優先順位の一番が私なんです。常に私の社会的な成功を望んでいて、達成するためにはどんな犠牲もいとわない。今回の事件もその延長線上にあったかと思うと、私は夫を責めることができません。

 そもそも事件は私の選挙で起きたことなので、その中で起こったことは全て、候補者である私が責任を取らなければなりません。しかも、自分の夫が引き起こしたことであれば尚更です。

 有権者、支持者に対する責任もあります。自分の支持者を傷つけてしまったことが、本当に申し訳なくて、死んでも死に切れない思いを持ってきました。
 

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