海外頼みの再エネと車載電池市場

 実は、原子力推進とEV抑制は、日本の産業競争力を劇的に落とした元凶であることはあまり認識されていない。原発を推進するために再エネへの投資が抑制されたり、休止中の原発の再稼働のために送電線を空けることで、再エネ向けの送電線確保に支障が出たりしている。再エネシフトが大きく遅れたために、世界の過半のシェアを占めていた太陽光パネルや風力発電機産業がほぼ壊滅状態となっている。さらに、その部品や材料の産業も競争力をなくしてしまった。今や中国に完全に抜かれて、もはや自力復活は無理となり、つい先日も、経産省が、風力発電機の部品を作るためにデンマークのベスタス社に補助金を出して、日本に部品製造の拠点を設けてもらうといった計画を発表するという恥ずべき状況だ。

 一方、EVの抑制は、電池産業を潰した。テスラの陰にパナソニックありと言われたのはついこの前のことだが、同社は、車載電池市場で世界ダントツの地位からあっという間に滑り落ち、もはや世界6位(2024年通年)で数%のシェアしかない。その結果、絶対的優位にあった電池の部品・材料でも中国に太刀打ちできなくなってきた。

 さらに新たな問題も生じている。原発推進を正当化する理屈として、AIデータセンターの電力需要の激増という話が使われている。そのために、AIデータセンターの消費電力を劇的に減少させる技術開発には予算がつかない。電力需要が減りすぎると原発不要論につながるからだ。日本では、以前このコラムでも紹介した世界で類を見ない半導体を丸ごと水に浸して冷やすという「水浸冷却技術」が開発された。しかし、経産省が前述の理由からこれを支援しないのだ。このため、今や、この技術の開発拠点が台湾に移転する寸前だ。原発推進の大きな副作用と言って良い。

 また、経産省と自民の大国主義、メンツ重視の産業政策が引き続き失敗を重ねそうだ。

 日の丸ジェットは大失敗したのに、また新しいプロジェクトを始める動きがある。ロケットでも、世界は遥か先を行くのに、いまだに日の丸ロケットにこだわり、勝算のない賭けを続けている。

 日の丸半導体のエルピーダは破綻し、同じく日の丸半導体と言われたルネサスも復活せず、日の丸液晶のJDIも苦境に喘ぐ。失敗、失敗の連続なのだ。

 それにもかかわらず、世界最先端半導体の製造業を復活すると約束したラピダスプロジェクトがこれからますます政府資金を吸い尽くす。40ナノレベルで脱落した日本が、いきなり2ナノレベルの半導体を作ると言うのだが、大々的に行った先日の試作品発表会にも提携先や装置納入メーカーなどはゴマスリで顔を出したが、世界の主要な需要家は集まらなかった。これだけ先端半導体が足りない状況なのに、政府の助成金約1.8兆円に対して、民間の出資はたったの七十数億円。特に米国などのテック企業からは一円も出資が集まらない。誰も成功するとは見ていないからだ。それでも経産省は、巨額の助成金を出し続け、結果的に5年ほど経つと、失敗だが誰も責任は取らないという従来パターンが繰り返されるのは必至だ。

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