2024年の衆議院選挙で演説する自民党の高市早苗。保守層からの支持が厚い(写真:長田洋平/アフロ)
2024年の衆議院選挙で演説する自民党の高市早苗。保守層からの支持が厚い(写真:長田洋平/アフロ)

防衛政策のタガが完全にはずれてしまう

 また、今回の参議院選挙では防衛費を現在政府が目指している「GDP比2%」を超える水準にするべきだと考える候補者の割合が、参政(45%)や国民民主(30%)の方が自民(25%)よりも高く出た(日本経済新聞社アンケート)が、高市氏も基本的に防衛費増額論者なので、軍拡路線が強化されるのは必至だ。

 また、高市氏は閣僚時代にも靖国神社を公然と参拝していたが、昨年の総裁選の際には、首相になっても「適切な時期にきっちりと普段通り淡々とお参りをしたい」と公言していた。この言葉通り行動すれば、中国との関係は極端に悪化し、中国側から強硬な反応が予想される。高市氏はそれを利用して、さらなる軍拡が必要という論陣を張る可能性がある。中国との真っ向対立路線となれば、中国の軍事力に伍する軍備が必要ということになり、無謀な軍拡路線になるだろう。安倍晋三元首相がやりたくても、中国との関係などを考えて若干抑制していた防衛政策のタガが完全にはずれ、あらゆる意味で、軍事優先の政策に転換していくことが予想される。

 米国のヘグセス国防長官は、西太平洋のあらゆる有事において最前線で日本が戦うことになると明言しているが、高市氏は、この役割を拒否するどころか、むしろ進んで担おうとするはずだ。その場合は、台湾有事だけでなく、南シナ海での紛争にも積極的に日本が関与していくことになる。

 軍拡とともに心配なのが、原発である。高市氏はもちろん原発推進論者だが、国民民主はこれに輪をかけたゴリゴリの原発推進主義である。原発「命」と言ってよいほど、その姿勢は突出している。もちろん、支援団体の連合傘下にある電力総連や基幹労連などの票と金欲しさの政策だが、既存原発の再稼働だけでなく、原発の新増設にも熱心だ。参政も次世代原発開発を唱えるなど、これに近い考えを持っている。このため、巨額の原発推進予算が組まれ、また、原発支援のための電気料金による国民負担が拡大することになる。

 右翼連合政権には、もう一つ、失われた30年で最大の問題である、成長できない経済を生み出した大国主義・メンツ優先の産業政策の失敗を繰り返すのではないかという懸念もある。さらに、トヨタに支配された自動車政策の弊害も顕著になるだろう。

 トヨタは、自民党や経済産業省の産業政策に直接介入して、自社の利益を最大化してきたが、実は、国民民主もこのトヨタに完全に従属している。トヨタ労組の影響下にあるからだ。経産省もトヨタの「支配下」にあるため、日本は極端な電気自動車(EV)の発展抑制策をとってきた。トヨタがEVを作れないことと、得意なハイブリッドで儲ける期間をなるべく長引かせることが理由である。この姿勢は変わらないと見られ、引き続き、EVへのシフトが遅れることは確実だ。

次のページ 日本の産業競争力を落とした原子力とEV抑制