
北海道福島町で新聞配達員の男性を襲って死亡させたヒグマが駆除された件で、道庁に抗議の電話やメールが相次ぎ、鈴木直道知事が苦言を呈した。だが、道庁を取材すると、ヒグマを殺すなという趣旨の抗議だけではなく、電話で「ヒグマを全滅させろ!」と怒鳴られたり、話がどんどんそれて2時間を超えたケースもあったという。さまざまな「抗議」は今でも続いており、現場は疲弊している。
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「ヒグマを全滅させろ!」、2時間以上「意見」も
福島町で新聞配達員の男性がヒグマに襲われて死亡したのは7月12日未明のこと。ヒグマは18日に駆除された。
道庁の担当者によると、ヒグマに関する電話やメールが来るようになったのは12日の事件発生以降だ。「クマを殺すな」「動物園に送って」というヒグマを駆除しないでほしいとの内容や、逆に、怖いから早く駆除してほしいという趣旨の意見もあった。
だが、落ち着いた内容の意見だけではない。なかには「ヒグマを全滅させろ!」と怒鳴って電話を切った男性や、駆除の是非の話からハンターへの報酬の問題などに次々と話題を変え、2時間以上も“意見”し続けたケースもあった。
本来の業務に支障をきたす
18日以降は駆除への抗議電話が増えたといい、人身被害が発生した案件であることや、二次被害を防ぐ必要性をいくら説明しても、「なぜ殺した!」などと、延々と一方的に抗議してくる人がいたという。
担当者は「ご意見を受け付けることは私たちの重要な役割」と前置きしつつも、
「長時間の電話になりますと、本来の業務に支障をきたすと言わざるを得ません。同じ意見を繰り返されたり、話が多方面にわたったりする長時間の電話への対応には、苦慮しているというのが現実です」と本音をこぼす。
24日までに寄せられた電話やメールは120件。
高橋知事は25日の定例会見で、駆除への抗議が相次いでいることを明らかにし、「2時間も、何時間もご連絡いただくということでありまして、これはもう仕事になりません」と苦言を呈した。