
定位置争いでチーム力が底上げ
村上に続いて長岡が1軍に復帰すればハイレベルな定位置争いが予想される。ヤクルトを取材するライターはこう語る。
「赤羽は三塁の守備能力だけでいえば、村上より上です。伊藤も長岡ほどの安定感はまだありませんが、試合を重ねるにつれて遊撃の守備力がどんどん上がっている。長岡が復帰した時に高津臣吾監督は起用法に頭を悩ませるのではないでしょうか。長岡が遊撃で伊藤を二塁に回し、山田哲人とスタメンを争うことも考えられる。捕手も古賀優大が攻守で奮闘ぶりが光ります。中村悠平はウカウカできません」
スポーツ紙デスクもこう話す。
「強いチームは定位置争いが熾烈です。ソフトバンクは今季、春先に故障で近藤健介が抜け、山川穂高が打撃不振でファーム降格を経験し、現在も柳田悠岐、栗原陵矢、今宮健太と主力に故障者が続出しています。でも、柳町至、野村勇、川瀬晃、ダウンズなどがその穴を補って余りある活躍を見せて、日本ハムと優勝争いを繰り広げている。ヤクルトもチーム再建に向け、若手が台頭してベテランをベンチに座らせるような布陣にならなければ、チーム力が底上げされません」(スポーツ紙デスク)
現在も最下位で借金18が残っているが、ヤクルトにとって幸いなのは、セ・リーグでは首位の阪神が独走し、2位・巨人以下に貯金がないというイレギュラーな展開になっていることだ。ヤクルトOBはこう指摘する。
「ゲーム差が離れてしまうとモチベーションを保つのが難しいですが、今年は借金を完済する位置に上がればCSに進出する可能性が十分にある。5位・広島の背中が見えてきていますし、早い段階で借金を1ケタに戻せばチャンスが広がる」
シーズン中盤まで下位に低迷していた球団が夏場以降に盛り返して、CSに進出したケースは過去にもある。15年連続Bクラスと低迷期が続いていた広島は13年に7月24日時点で借金14の5位だった。だが、8月以降に白星を積み重ねて借金を3まで減らし、97年以来16年ぶりのAクラス入り。勝率5割以下のチームとして初めてCSに進出した。
当時の広島を取材していたスポーツ紙記者は「若手の活躍が印象的でした。このシーズンで丸佳浩(現巨人)、菊池涼介が初の規定打席に到達し、松山竜平が中軸として頭角を現しました。投手では野村祐輔(現広島3軍投手コーチ兼アナリスト)が12勝をマークするなど、16年からリーグ3連覇と黄金時代を作る中心選手たちが新しい風を吹き込んでくれた。万年Bクラスだったチームが、勝つ集団に生まれ変わる重要な分岐点だったと思います」と振り返る。
ヤクルトでは、今オフに村上のメジャー挑戦も確実視されている。来年以降のチーム再建を見据えた観点からも、残り56試合、1戦1戦が重要な戦いとなるだろう。上昇気流に乗っているチームは、どこまで上がっていけるか。
(今川秀悟)
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