
「結婚を手段化したっていい」
問題なのは、現在の日本社会に「選択的おひとりさま」を支える社会保障制度が不足している点だという。
「欧米では社会制度が整い『制度化された個人主義』が進んだものの、日本はそうはならなかった。『家族単位』の社会制度が維持されました。家族をもつことを避けた人が、仕事でも思うように活躍できなかった場合、社会の支援からも漏れて、「はしごを外された」と感じてしまうこともありえるでしょう」
そして、こうも話す。
「おひとりさまとして生きていくと決めたとしても、なんかちょっときついなとかしんどいなと感じたら、誰かと生きるという選択肢を持ったっていい。揺らいだって何も恥じることはない。結婚を手段化することも決して恥ずべきことではないからです」
そこで、原点に戻って考えようと提案する。
「今の結婚に伴う負担が大きいと感じて結婚を選ばないのであれば、どうしてそうじゃない結婚を作らないの?と言いたい。いまどきは男性役割にへきえきしている男性も少なくないので、柔軟そうな相手をうまく見つけて、自分も稼ぎながら、家事分担も夫とイコールでやっていく。そんな結婚を選んでもいいと思うし、親族との付き合いが嫌と思っても、それも人生の経験になると視点を変えて受け止め、面白がってみたっていい。いかようにも、なんです」
「結婚は究極にめんどくさい」と話す、おひとりさまの50代会社員女性は、「結婚によって得られる学びや成長があることもわかっています。きっとどちらの道を選んでも足りないところはある。だから『自分が選んだ人生を引き受ける』ことが大切だと思っています」と話す。
結婚してもしなくても、自分の人生は自分で切り開き、自分で決められる時代へ。制度面の充実は急務だが、しなやかに柔軟に生きたいと願う女性は間違いなく増えている。(AERA編集部・大崎百紀)
※AERA 2025年8月4日号より抜粋、加筆して編集。
こちらの記事もおすすめ 【もっと読む】「結婚は究極にめんどくさい」 自分のためだけの時間とお金を自由に“選択的おひとりさま”の魅力