
人生を歩む上で結婚は大きな選択であり、ライフスタイルへの影響も大きい。結婚しないことを選ぶ人が珍しくない今、自分の選んだ人生をどう生きていくかを考える。AERA 2025年8月4日号より。
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2017年に著書『生涯未婚時代』を出した兵庫教育大学大学院教授の永田夏来さんはこの8年を振り返り、「執筆時と比べて、『選択的未婚』や『結婚を自らの人生設計から外す』という選択に対する注目は広がっているように感じています」と話す。
「結婚しないことがもはや『例外』ではなくなりつつある今、『孤独』や『ひとりでいること』そのものをどう意味づけ、どう自律的に生きていくかという視点が強まっている印象です」
家族社会学者で京都大学名誉教授の落合恵美子さんも「選択的おひとりさま」という生き方を選ぶ人は確実に増え、社会的承認も得られるようになっていると見ている。
「『みんなが結婚して子どもをもち家族をつくる」というのは、『人類社会の当たり前』ではないのです。江戸時代の日本でも、男女とも10人に1人以上が生涯未婚という地域は実は普通にありました。みんなが適齢期に結婚して2、3人の子どもをもつという社会は、日本では1970年代にピークを迎え、その後は適齢期規範もゆるみ、未婚率も上昇しました。もちろん望んでいなかったのに未婚という場合も多いですが、自ら選択したケースも増えています。結婚はひとつのライフスタイルになったとさえ言われています」
一人で生きていくと決めたときにやるべきこと
とはいえ「これこそ理想として語ることには慎重であるべき」とも話し、阿部彩さんの「女性の貧困の再考察」(上野千鶴子・ 江原由美子編『挑戦するフェミニズム 』所収)を引用しつつ、こう続ける。
「未婚女性は家事や育児の負担もないので男性並みに働けるかというと、残念ながらまだそうではありません。現役世代の未婚女性の4人に1人は一人暮らしですが、その5人に1は貧困です。親元に同居しても、母親のみになったら、ふたりして貧困状態に陥ることが少なくありません。未婚女性の貧困リスクは高齢期にさらに高まります。とはいえ、結婚して仕事を辞めたら、離別や死別すれば、さらに深刻な貧困リスクにさらされるので、それにDVやモラハラなど他のリスクもあるので、結婚したらリスクから解放されるとはもちろん言えませんけれど」
「一人で生きていくと決めるということは、迫りくる人生でやってくる色々な段階で自分がどう動くかというのを事前に考えていないといけないということ。たとえば自分がケアされる側になった時。親の介護が必要になった時。他のきょうだいから『独身なんだから』と介護を押しつけられる可能性もある。キャリアのつまずきや病気で、貧困や孤立になるということもなくはないでしょう。そうなった時にどうするか。そういう心構えも必要でしょう」