
本書は町田さんの初の自叙伝となる。バスケを始めたきっかけから、アメリカのプロリーグWNBAでの挑戦、自身のバスケに対する考え方や仲間たちへの思いなどが、飾らない言葉で綴られる。
バスケを始めたのは小学校2年生のとき。すぐにのめりこみ、家でもパスやドリブルを練習し、壁や床に穴があいたという。練習メニューや課題、タイムなど毎日ノートに記録。背の低い町田さんが、「自分の生きる道」としてこだわったのが、パスだった。
「パスは自分の中で一番にあること。これしかないと思ってやってきました」
相手に合わせて、ボールの強さや高さを変えるのはもちろん、縫い目の位置も考えてパスを出す。最高の状態で仲間にチャンスを作ることが最優先で、自分で得点するよりパスを選ぶ。たとえコーチが、自分でもっと得点を狙うように指導しても、納得できなければ変えない。日本代表に選ばれるかどうかの瀬戸際でも、それは変わらなかった。
「よく頑固と言われます(笑)。でも、他人ファーストであるのは私の強み。柔軟には考えるけれど、自分の軸は絶対にブラさないです」
大事にしてきたのは「自分らしさ」。みんなと同じ道を行き、同じことをしても、そこではトップになれない。自分の武器や良さが分かったら、それを大事にすればいいという気持ちなのだと言う。
「人と同じことをするのがあんまり好きじゃないというのもあるかもしれません。それに自分で決めたことをやれば、全部自分が責任を持てる。たとえ失敗しても人のせいには絶対にしたくない」
遠くに目標を置かず、まず目の前のことに一つひとつ取り組んできたことも、キャリアを支える秘訣かもしれない。
「バスケット人生やり切りました、と思って引退できたらいいなと思ってます」
(編集部・大川恵実)
※AERA 2025年8月4日号
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