
ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手ら、スター選手たちが出場したオールスターゲーム。選手だけでなく、ルール面でも「話題性」にあふれる一戦だった。メジャーリーグの今について、在米ジャーナリストが解説する。AERA 2025年7月28日号より。
【写真】MLBオールスターゲームのレッドカーペットで真美子夫人とのツーショット
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夏の祭典、オールスターゲームが終わった。
スター選手たちが一堂に会するこのイベントは、テレビ中継の視聴率が下がり、若年層の関心が数多くのエンタメに分散する中で、メジャーリーグにとって“魅せる努力”が問われる場だともいえる。どんな演出をすれば、人々の目を引きつけられるか。どんなスターがいれば、新たなファンを生むことができるのか。
そうした中で、メジャーリーグは大谷翔平が「リアル二刀流」で活躍し始めた2021年以降、毎年のようにオールスターゲームを、球界一のスーパースターである大谷を、まだよく知らないアメリカ人に印象づけるための「お披露目の場」にしてきた。
広く、多様なアメリカ。誰もが同じ話題を追う時代は終わった。テレビや新聞、雑誌に昔のような影響力はない。SNSでそれぞれの関心を深掘りする日常の中で、より多くの目を引くには、抜きん出た個性や人間ドラマ、そして「見たことのないもの」が必要になる。野球界にとってそれは「大谷の二刀流」なのだ。
変わる球宴
今年、大谷はオールスター期間中にスポーツ専門局ESPNの人気トーク番組「The Pat McAfee Show」に出演した。野球ファン以外も視聴する番組だ。やはり話題は「二刀流」に集中した。二刀流の難しさ、なぜそんなに体が強いのか、アメリカの好きなところなど。印象的だったのは、大谷の英語力だ。通訳が訳す前に日本語で答え、英語で直接答える場面もあった。投手・大谷が打者・大谷と対戦したら三振を取れるかと聞かれ、「I think I can(できると思う)」と笑顔で答えた。司会者に「私にはどんな球を投げる?」と聞かれた時は、「High fast ball(高めの速球)」と即答し笑いをとった。英語の上達は、チームメイトやスタッフとの連携やクラブハウス内での人間関係を築く助けになる。加えて、公の場で英語を使うことで、大谷の人柄が日本人以外のファンにも伝わることになる。メジャーリーグにとっても喜ばしいことなのは間違いない。