ZOZOマリンは海からの強風が常に問題となる。また地球温暖化が強烈に進む中でドーム化を求める声も多いが、新球場は従来通りの屋根のない屋外型に決まりそうだ。

「建設主体の千葉市は建設費を安く抑えたい。ロッテとしては野球やエンタメでの使用を考え可能な限りの設備を導入したいが、今のままでは最低限のものになる可能性が高い。今後の交渉、何より『ロッテがお金をどれだけ出すか?」にかかっている」(スポーツマーケティング会社関係者)

 千葉市の試算では、新球場建設に関してドーム型は固定式屋根で約2300億円、開閉式で約2500億円、屋外型で約1750億円。千葉市のプロジェクトだから、最も安上がりの屋外型になったのは当然かもしれない。

 しかし今後、資材価格高騰でさらにコストが膨らむ可能性は高く、「お金がいくらあっても足りない」という声が千葉の各方面から聞こえている。そんな中、千葉県鎌ヶ谷市の2軍施設を北海道へ移転することを決めた日本ハムは、またも新たな手を使おうとしている。

「日本ハムは新2軍施設に関して、自治体に建設費の一部負担を求める気持ちがあるとされる。プロ野球で町おこしができるのはエスコンFの事例が証明した。『球団と自治体が良い形でタッグを組み、資材価格高騰などの逆風を乗り越えよう』とする、実に素晴らしい方法」(在京テレビ局スポーツ担当者)

「自治体頼り」「球団だけの負担」での球場・施設建設には限界がある。時代に即した方法で前進を続けようとする日本ハムの姿勢には感嘆させられる。

「建設費や人件費の高騰で止まってしまった事例は、全国で増えている。中には病院や公共交通機関の建物も含まれる。球場等のエンタメ施設は、『無くても生活に困らないもの』である。それでも造ろうと思うのならば、関係各位が歩み寄って可能な限りのことをするしかない」(スポーツマーケティング会社関係者)

 素晴らしい環境こそが最高の戦いを作り出す。良質の箱でこそ極上のエンタメを楽しむことができる。何かと厳しい時代だろうが、知恵とお金を出し合って素晴らしいモノを作り上げて欲しい。米国や韓国だけでなく、日本から世界に発信できる素敵な野球場が増えることを願いたい。

(文・田中雄也)

田中雄也/元高校球児で大学卒業後は出版社に勤務後、独立してフリーのライター・編集者として活動を開始。スポーツを主としながら、音楽、ファッションなどのカルチャーやライフスタイルに関する編集・執筆活動も行っている。現場や人物に密着した取材を得意とし、選手の言葉や背景に深く光を当てるスタイルに定評がある。

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