ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は「武田真一さん」について。
* * *
高校野球、大相撲、ジャニーズ。これらの分野で年下が台頭してくると、男は「自分も歳を取ったなぁ」と実感するもの。私にとっては、松坂大輔・千代大海・V6(カミセン)などがそうでした。今年で48歳になりますが、気づけばスポーツ選手もアイドルも二丁目のママも年下ばかり。社会全体を見渡しても、私より年上の世代が中核を担っているのは、もはや政界ぐらいです。
私は人間が出来ていないため、どんなに優秀で魅力的な人でも「自分より少し年下」だと分かった瞬間、心の中で先輩もしくは兄貴ヅラをしてしまう節があります。逆に「少し年上」に対しては、「だって自分の方が年下だし」というエクスキューズを盾に無条件降伏をします。キムタク、貴乃花、イチロー、安住さん、マツコさん。いずれも私なんぞが太刀打ちできる相手ではありませんが、いいのです。だってみんな年上だから。
もうひとつ、歳を実感する例として「NHKのアナウンサー」というのがあります。特に夜7時のニュースは、今も私にとって「ザ・大人の象徴」です。なので「こんばんは。ニュース7(セブン)です」の声が初めて年下になった時はショックだったのを憶えています。
『7時のニュース』時代から、明石勇さん・松平定知さん・川端義明さん・宮田修さん・石澤典夫さん・畠山智之さん・末田正雄さん。女性では、私がもっとも敬愛するアナウンサーである森田美由紀さん。我が家は夜7時になると、問答無用でテレビはNHKニュースだったので、彼らの粛々とした美声は、今でも脳内再生できるぐらい刻み込まれています。
そして、私にとって最後の「夜7時の年上」は、先だってフリーに転身し、4月から日テレで朝の情報番組の司会を始めた「たけたん」こと武田真一さんでした。武田さんが『NHKニュース7』のメインキャスターに就任したのが2008年春、40歳の時。私もすでに32歳になっていましたが、「7時のニュースは年上」という漠然とした概念と同時に、「私はまだ若者なのだ」と高を括っていたものです。