高齢化が進み、家族が介護の担い手となるケースは増える中、親の世話を機に精神的に追い詰められていく人が少なくない(写真=記事中の女性提供)
高齢化が進み、家族が介護の担い手となるケースは増える中、親の世話を機に精神的に追い詰められていく人が少なくない(写真=記事中の女性提供)
この記事の写真をすべて見る

「親との縁を切りたい」……年老いた両親などの介護の負担に耐えかね、「家族の代わり」を生活支援サービスに任せて「家族じまい」を考える家族が増えているという。認知症が進んだ親のケアを一人で抱え込み、自身も心身を壊して追い詰められていく子ら。専門家は「深刻化する前に相談を」と呼びかけている。

【図】育児と介護の「ダブルケアへの備え4カ条」はこちら

*   *   *

 父親が、亡くなった。

「死ぬまで連絡は不要」としていた父。都内に住む50代の男性会社員に連絡があったのは、今年2月のことだ。

 3年ほど前に母親が亡くなったあと、70代の父親に認知症の傾向が表れ始めた。普段の態度が変わり、マイナンバーカードをつくることを勧めると「カードで俺の金を下ろそうとしてるんだろう」と罵られた。何か言うたびに、包丁を手に「刺すぞ」と脅された。

 一人で問題を抱え精神的に追い詰められて不眠症になり、仕事も手につかなくなった。

 昨年4月、一般社団法人「LMN」(東京)に相談をした。
 

 同法人の設立は2016年。当初は身寄りのない高齢者の生活支援が目的だったが、「毒親」という言葉が浸透してきた3年ほど前から、「親の看取り」に関する相談が増加。今年3月には、親の介護や看取りまでを代行するLMNの専門相談窓口「家族じまいドットコム」を立ち上げた。

 高齢になった両親などの介護をめぐって精神的に追い詰められ、「相談先もなく、悩みを抱える人が増えています」と、LMNの代表理事を務める遠藤英樹さん(57)は話す。

 LINEでの相談は月200件以上に上るが、相談者は親の介護や親からの過干渉に悩む40~50代の団塊ジュニアが中心。特に最近は、男性からの依頼が急増しているという。

次のページ