LMNが提供するサービスは、介護や買い物、洗濯、通院の付き添い。さらには、亡くなった後の葬儀や納骨まで多岐にわたる。介護は資格を持ったスタッフが対応し、依頼者である子どもには、希望すれば状況を伝えたりもする。

 代行サービスの料金は初期費用が55万円。以後、呼び出しに応じるなど1回(4時間程度まで)のサービス利用につき1万3500円(交通費込み)。決して安くはないが、依頼者の多くは、親から解放される「精神的な自由」と「時間」を買っているという。現在、関東、関西、東海地方を中心に約350人がサービスを利用しているという。

 父親の介護に苦しんでいた先の男性も、後ろめたさがなかったわけではないが、悩んだ末にすべてを任せることにしたのだった。

 LMNは父親の施設への入退院の手続き、亡くなった後の葬儀や納骨の手配。さらには、実家の片付けから遺産整理まですべてやってくれた。

 男性は言う。

「父親に関するすべての電話がかかってこなくなったので、精神的にものすごく楽でした」
 

 しかし、LMNの遠藤さんは、「このサービスは、決して親子関係を断絶させるものではない」と強調する。

 サービスを「家族代わり」に利用してもらうことで、親子間に新しい距離感や関係が構築され、双方が納得できる形での「家族じまい」を目指しているという。

「本来、私たちのような仕事はあってはいけないものです。しかし、核家族化や一人っ子の増加といった現代社会の変化の中で、家族の関係性を円滑に進めるためには必要不可欠な存在でもあると思っています」
 

ダブルケアに苦しんで

「死ねばいいのに」

 都内に住む自営業の女性(45)は、両親に対して何度そう思ったかしれない。

 父親は10年ほど前に受けた手術が失敗し、要介護の認定。母親は認知症との診断を受けている。2人は当時、70代。6年前にシングルマザーで子どもを出産した女性は、子育てと介護を一人で担うことになった。

 実家近くに住んで両親の介護を続けてきたが、やがて父親は要介護5にもなり、認知症が進んだ母親は徘徊が始まった。

 育児と介護のダブルケア。女性は次第に精神的に追い詰められていった。

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