
親との縁を切り、捨てることができればどんなに楽か――。何度も思ったが「子どもが親の介護をするのは当然」という周囲の考えも相まって、誰にも相談できないまま責任に押しつぶされそうになった。やがて不眠に、そしてうつの症状を発症した。気がつけば「親が死ねばいい」とまで考えるようになったという。
「私が実際に殺せるわけでもありません。ただただ早く死んでほしいと願いました」
そんななかでLMNの遠藤さんと知り合った女性は22年、藁にもすがる思いでサービスを依頼。LMNのスタッフは、特別養護老人ホームへの入所をためらう父親を説得し、23年に母親が亡くなった際には、葬儀の手配とゴミ屋敷になっていた家の整理の手伝いまでしてくれた。
「頼れる第三者がいたおかげで、精神的にも楽になりました」
女性はそう振り返る。
法律上は切れない親子の縁
高齢になった親の介護に限らず、親からの過剰な干渉や支配、いわゆる「毒親」からの精神的な苦痛に苦しみ、親から逃れたい、関係を終わらせたいと考える人は少なくない。
では、親を捨て、親との縁を切ることはできるのか。
「成人してから親子の縁を切ることは、法律上は不可能」
そう指摘するのは『毒親絶縁の手引き』を監修した「テミス法律事務所」(岡山市)代表の柴田収(しゅう)弁護士だ。
親子関係は戸籍によって証明される法的な繋がりであり、たとえ「関係を断ちたい」と思っても、法律的に完全に無関係になる手段は存在しないという。