長く水商売の世界にいましたが、そこにやってくる男性客にその発想があることは稀(まれ)です。彼らはホステスと妻は別物、もちろん妻と別れる気はないし感謝もしているし愛もある、でも仕事でストレスを感じた際にこういう刺激のある場所は必要、遊びもできない男は良い仕事ができるわけがない、という俺理論を振りかざします。それはもちろん建前ではなく本音で、たとえ寝たからと言ってホステスに本気になったり妻を捨てたりはしないのでしょう。でも彼らの中では線引きのある別物で必要な遊びだからといって、パートナーの側がそうと了承しているとは限らない。俺の中ではこれはオーケーこれはやっちゃだめという俺基準はあっても、相手がどう感じるかという視点はあまり感じたことがありません。

「ちょっとしたアフェアや火遊び」が許される人の条件

 それに対して、文字だけのチャットであっても、見られて困るものはよくないのではないかという不安は思いやりに満ちており、個人的にはちょっとしたアフェアや火遊びは、そういう感覚がある人だけに許される贅沢だと思っています。自分に都合の良い基準で色々言い訳ができてしまう人は、本来的な意味で秘密の楽しみや背徳感を味わうことができませんし、人をちょっと不快にさせることと深く傷つけることの境目も曖昧です。人の心を察する想像力があって初めて、人はちょっと悪いことを楽しむ権利がある、と私は思うので、いけないことかなぁと思えるような火遊びチャットをまずは思う存分楽しんでほしいと思います。

 さて、蜜の味の背徳感はさておき。特定の相手とペンパルになることやチャットでドキドキすることが浮気に準ずる行為なのか、もとても面白い問いだと思います。何を浮気とみなすか、何に傷つき何に怒るか、というのはその人の恋愛観、恋人に何を求めるか、という問題と表裏一体です。たとえば自分と同性の浮気相手は絶対に認めないけれども、バイセクシュアルである彼が男性と愛し合うのは許容している、という人もいれば、キャバクラも風俗も浮気です、という人もいる。愛人を半ば公認している本妻もいます。モノガミー願望が強いのか、自分のプライドに重きを置くのか、肩書きや世間体が大事なのか、自分の自由を守ろうとするのか、議論の面白い分野です。

次のページ 人間ではない何かと恋をする