6月に急きょ出馬が決まった自民党の柳本氏
6月に急きょ出馬が決まった自民党の柳本氏

目標はわずかに改選議席プラス1

 今回の参院選で、維新は選挙区に15人、比例区に13人の計28人の候補者を擁立したが、吉村氏が目標としたのは「6議席以上」。改選議席が5議席なので、わずかにプラス1。大阪選挙区の2議席確保を前提にした場合、他の選挙区・比例区あわせて4議席という遠慮がちな目標だ。

 前出の維新の地方議員はこうぼやく。

「3年前の参院選と比較すれば、いかに維新の人気が急降下しているのか、街頭演説を見ても身につまされる。今回の参院選では、選挙区でとれそうなのは大阪くらいで、東京や兵庫も大苦戦。選挙区で議席がとれないと比例の得票数にも直結する。そうなれば、吉村代表の責任問題に発展し、党内抗争にもなりかねない」

太田房江氏の辞退で候補決定は直前

 直近3回の参院選で、維新以外の2議席は自民党と公明党が「指定席」のように獲得した。だが、全国的に苦戦が予想される自民は、大阪でも厳しい情勢だ。

 自民は19年の参院選で当選した現職で、元大阪府知事の太田房江氏を公認する方針を5月半ばに決めていた。しかし、太田氏は旧安倍派で「裏金議員」として名前があがり、それ以外にも「政治とカネ」の疑惑が週刊誌で報じられた。太田氏は「体調不良」などを理由に5月26日に自ら出馬辞退を表明。自民はそこから緊急公募をし、元衆院議員の柳本顕氏の擁立を発表したのが6月11日。7月3日の公示日まで1カ月もないタイミングだった。

 柳本氏は元大阪市議で、過去に2度、自民党から大阪市長選に出馬している。だが1度目の15年は吉村氏に、吉村氏の辞職を受けて行われた18年は維新の創設者の松井一郎氏に敗れている。

「柳本氏は大阪市議として、手腕には定評がありますよ。維新が提唱した大阪都構想には、反対の急先鋒として名をあげました。でも、大阪市長選で2度も負けており、ここという勝負強さがない。出馬辞退した太田氏は府知事の経験があってそれなりの人気もあったが、柳本氏はそこに届かない。街頭に立つと自民党への逆風がすごいと感じます。昨年の衆院選大敗のきっかけになった裏金事件も、まだまだ批判が強い。政権与党なんだから定数4なら2人を立ててもおかしくない。それを1人に絞って勝てなかったら、石破政権が吹っ飛んでもおかしくないですよ」(自民党幹部)

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