2021年のホームランダービーに参加し、疲労困憊の様子の大谷(AP/アフロ)
2021年のホームランダービーに参加し、疲労困憊の様子の大谷(AP/アフロ)

ジャッジはホームラン競争のあと37試合連続三振

「後半戦に入ると、強引に引っ張った打球が目立ち打撃を修正に苦労している様子が見ました。ホームラン競争で長打を狙う打ち方をしてしまうことで、打撃のメカニズムに狂いが生じる側面は間違いなくある。大谷は22年から参加していませんが、ジャッジも18年から出場を辞退しています。ジャッジは17年に52本塁打で初のタイトルを獲得しましたが、ホームラン競争で優勝した後は一時打撃不振に陥り、37試合連続三振を喫しています。打撃のバランスを崩し、修正することに苦労していましたね」(メジャー担当のスポーツ紙記者)

 昨年からホームランダービーは1回戦と準決勝は40球、決勝は27球という球数制限が加わり、45分間のタイムアウトも認められているが、選手の肉体的負担は大きい。今年はア・リーグトップの33本塁打をマークしているカル・ローリー(マリナーズ)が参加を発表したが、大谷、ジャッジ以外にも、ウラジミール・ゲレーロJr(ブルージェイズ)、エリー・デラクルーズ(レッズ)らスター選手たちが出場を続々見送った。

 メジャーのホームラン競争は1985年から始まったが、06年から14年までは本塁打以外のスイングをすべてアウト(打てるボールが来るまで見逃すのは何球でも可能)とし、10アウトになると終了というルールだった。現在の制限時間制になったのは15年から。米国で取材するテレビ関係者は、ルール変更に至った経緯を語る。

「制限時間制の方がホームランの数が増え、盛り上がるからです。ファン目線を意識したルールになったわけですが、選手からみればアプローチの仕方を変えなければいけません。以前はボール球を見逃してホームランになる球を打っていましたが、制限時間内に本数を重ねる方式だと、多少のボール球にも手を出してスタンドに運ぼうという意識が働く。しかも、息つく間もなくスイングしなければいけないので打撃の形が崩れるリスクがある。ア・リーグ球団の打撃コーチは『百害あって一利なしだよ。打撃は繊細だ。試合の打ち方に即していないアプローチをすると打撃フォームが狂ってしまう。ケガのリスクもあるし、ウチの選手はできればホームラン競争に出場してほしくない』と漏らしていました」

 大谷は投手と野手の二刀流でプレーしているため、他の選手より肉体的な負担が大きい。現行のルールでは参加するメリットが感じられないと判断するのは当然と言える。MLBは来年以降も、現在のルールでホームラン競争を継続するのか。選手のコンディションを重視し、メジャーを代表するスラッガーたちの出場を望むなら、おのずと答えが出るだろう。

(今川秀悟)

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