
ひとつは、冒頭のハワイへ行った家庭のように子ども発信で親がその体験活動をサポートする家、二つ目は、親の積極的なリードで体験活動に取り組む家庭だ。三つ目は、子どもはやりたいと思っていても、経済的な理由でできない家庭。四つ目が親子共に興味がないというパターンだ。
「子ども時代に自然体験から得られることは多いので、機会はあったほうがいいんです。でも三つ目、四つ目の家庭ではそれが難しい。その家庭の子どもをすくい上げるために、昔は地域の子を受け入れる地域活動がありましたが、その担い手が少なくなったこともあり、家庭で体験活動をできない子が取り残されてしまっています」(青木教授)
小学校受験でも体験は必須、親がストレス抱えることも
体験活動に必死になるのは、大学受験を見据えた家庭ばかりではない。最近、共働き家庭の参入も増えているとされる小学校受験に臨む家庭も同じだ。
多くの小学校でよく出るのが「季節」や「野菜・果物」「昆虫」をテーマにした問題。「春の花に○、秋の花に△をつけなさい」「カブトムシが捕れる季節の野菜を選びなさい」など、机に座って教え込むよりも実際に体験させた方がいい問題がずらりと並ぶ。
「『かり』『がり』と名の付くものはほぼ制覇しました」と話すのは、現在、第2子の小学校受験を控えている都内の会社員の女性(40代)だ。通っている幼児教室から勧められたこともあり、イチゴ狩り、潮干狩り、ブドウ狩り、稲刈り、紅葉狩りなどのイベントで週末の予定を埋めているという。
「潮干狩りの時期は、自分たちの休みの日と、天候条件がマッチする時を狙わなければいけない。まさか自分が潮見表を見る日がくるなんて思ってもいませんでした。正直、ちょっと疲れてきました」と本音を漏らす。
幼児期から大学受験期まで、多くの家庭が無視できなくなっている体験活動。文科省は直接的な体験活動が減り、ネットを通した「間接体験」や、シミュレーションなどを通した「疑似体験」が増えていることを懸念し、ホームページで「ヒト・モノや実社会に実際に触れ、かかわり合う『直接体験』が重要」と記している。だが、その一方で、体験格差は拡大し、子どもに何らかの体験をさせることに疲弊している親も確実に増えている。