空中くるりんぱに挑むつば九郎(日刊スポーツ)
空中くるりんぱに挑むつば九郎(日刊スポーツ)

「つば九郎は天国で見守っている存在」

 別れの時は、突然やってきた。球団が今年2月19日に「これまで、つば九郎を支えてきた社員スタッフが永眠いたしました」と公式ホームページで発表。全国の野球ファンが大きなショックを受けた。ヤクルトの高津監督や選手たちだけでなく、ドジャース大谷翔平、元中日監督の落合博満氏など球界関係者が次々と追悼のメッセージを寄せた。

 逝去から4カ月が経った現在も、つば九郎のグッズをつけて球場に詰めかけるヤクルトファンの姿が目立つ。都内に住む30代の女性は「まだ野球のルールも分からなかった子供の時に、父に連れられて神宮に来て最初に好きになったのがつば九郎でした。その後に宮本慎也さん、五十嵐亮太さん、青木宣親さん、山田哲人くんと気になる選手がどんどん出てきたけど、つば九郎はずっと特別な存在です。つば九郎がいなかったら野球を好きにならなかった」と思いを語る。来年中に復帰を検討しているというニュースを聞き、複雑な思いになったという。

「私の中でつば九郎は天国で見守っている存在なんですよね。だから、復帰というのが心にスッと入ってこなくて…『2代目つば九郎』というのも違和感があります。ファンの方たちでそれぞれの意見があると思うし、何が正解か分からないので難しいですよね」

「つばちゃん、おかえり」とは迎えられない

 つば九郎が毎日ひらがなでつづっていた人気のブログ「つば九郎ひと言日記」は、2月3日の更新を最後に止まったが、2万4000件以上のコメントが寄せられている。6月25日につば九郎復帰のニュースが報じられた後には、それについての賛否や様々な思いを込めたコメントが200件以上殺到した。

〈いなくなって次から次へとつば九郎が現れてもそれを「つばちゃん、おかえり」とは迎えられないのが本音〉

〈来季中という目標にとらわれて拙速な判断になりませんように。つばちゃんの意思、つばちゃんの近くにいた現場スタッフの方々の意見が尊重されますように〉

〈きっと、誰もが、それぞれのつば九郎を胸に抱いている。そのどれもが正解だと思います。私は、とにかく、つば九郎に会いたい!ただ、それだけです〉

 ヤクルトの球団OBは「つば九郎のキャラクターをそのまま復活させるのは難しいのでは」と指摘する。

「毒舌のフリップ芸が代名詞でしたけど、選手や首脳陣と普段から積極的にコミュニケーションを取っているからできるんです。信頼関係がなくいじったら、相手は不快に感じるし、ファンの反応も変わってしまう。つば九郎の唯一無二の職人芸で、真似できるものではないと思います」

 つば九郎がいなくなって孤軍奮闘している妹つばみの負担を減らす観点から見ると、歓迎すべきことだろう。ただ、その存在が、つば九郎なのか、つば九郎とは別のマスコットなのか。球団はどのような判断を下すだろうか。

(今川秀悟)

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