
ヤクルト本社の株主総会で、球団のマスコット「つば九郎」の復帰が明言され、つば九郎ファンたちを騒然とさせている。
6月25日に都内で開かれた株主総会で、林田哲哉球団社長兼オーナー代行は最下位に低迷しているチーム状況について触れ、取りざたされる高津臣吾監督の去就については、今季のシーズン最後まで指揮を任せることを明言。今年で3年契約が切れる主砲・村上宗隆については、従来通り今オフにポスティングシステムでメジャー挑戦を容認する方針を示した。そして、担当スタッフが2月に急逝して以降、活動を休止しているつば九郎についても話題が及んだ。
男性株主がつば九郎について、「何らかの形で戻してあげてほしい」と声を詰まらせながら要望すると、林田球団社長は「皆さんの意見を真摯に受け止めて、もう少し検討を重ねて再登場させたいと思っています」と明言。総会終了後に取材対応した林田球団社長は、「基本的には来シーズンくらいと思ってもらっていい」と来年の復帰を検討していると明かした。
毒舌とフリップ芸の継承は難しい
ヤクルトを取材してきたスポーツライターは驚きの声をあげる。
「つば九郎はあまりにも存在が大きすぎたので、球団サイドもファンの心情を考えてなかなか触れられなかった。今回、林田球団社長が来年中の復帰を示唆したのは驚きでした。チームが低迷している中、明るいニュースでしょう。ただ、どのように再登場させるかは非常にデリケートな問題です。毒舌とユーモアを交えたフリップ芸を継承するのは難しいですし、過去のつば九郎と比較され、後継者は精神的にも負担が掛かる。つば九郎の弟や息子の設定にした方が、ファンに自然に受け入れられるような気がします」
1994年に本拠地・神宮球場でデビューしたつば九郎は、球団のマスコットキャラクターを超えた存在だった。政治や芸能ネタを組み込んだブラックジョークをフリップに書き込んで観客を笑わせ、イニング間に行われる「空中くるりんぱ」は緊張感あふれる試合の中で癒しの時間となった。22年8月5日の巨人戦で主催試合2000試合出場を達成。昨年デビュー30周年を迎えた。
ヤクルトの球団関係者は「誰からも愛されるキャラクターでしたが、仕事に取り組む姿勢はストイックでした。試合の進行を妨げたり、時間が押したりするパフォーマンスは絶対にしなかったし、選手ファーストの姿勢を貫いていた。夏場の猛暑で大量の汗をかいていた時も、グラウンドに登場すればつらい素振りをまったく見せなかった。本物のプロフェッショナルでしたね」と振り返る。