松尾 潔(まつお きよし)/1968年、福岡市生まれ。音楽プロデューサー・作家。早稲田大学在学中よりR&Bジャーナリストとして活動していた(撮影/写真映像部 佐藤創紀)
松尾 潔(まつお きよし)/1968年、福岡市生まれ。音楽プロデューサー・作家。早稲田大学在学中よりR&Bジャーナリストとして活動していた(撮影/写真映像部 佐藤創紀)
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 社会批評集『おれの歌を止めるな ジャニーズ問題とエンターテインメントの未来』を世に放ち話題を呼ぶなど、近年は社会的な問題に対して積極的な発言を続けている音楽プロデューサーの松尾潔氏。彼はなぜ“モノ言う音楽プロデューサー”になったのか? 音楽と社会の関わりについて、松尾氏に話を聞いた。

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 松尾氏は早稲田大学在学中からR&Bを中心にした音楽ジャーナリストとして活動。90年代半ばから音楽制作に携わり、SPEED、MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加し、その後はプロデューサー、ソングライターとして平井堅、CHEMISTRY、東方神起、JUJU、EXILEなどの作品を手がけてきた。

 松尾氏の新刊『松尾潔のメロウなライナーノーツ』(リットーミュージック)を読むと、彼の功績の一端を垣間見ることができる。同作には、松尾氏が90年代に執筆した300本を超えるCDライナーノーツから厳選した52本が収録されており、女性シンガー編、男性シンガー編、グループ編で構成されている。これを読めば「90年代R&Bとは何だったのか?」を追体験できる、R&Bビギナーにとっては絶好の入門書とも言えるだろう。

(撮影/写真映像部 佐藤創紀)
(撮影/写真映像部 佐藤創紀)

ライナーノーツは「しゃべるように書く」

――新著『松尾潔のメロウなライナーノーツ』には、松尾さんが90年代に執筆したR&Bのライナーノーツから厳選された52本が収録されています。

 僕の20代とほぼ重なる90年代に書いたライナーノーツは、おそらく300本以上あって、その中から読みやすいものを選んだつもりです。たとえばジェイムズ・ブラウン、ロリ・ゴールドのライナーは旅エッセイのように書いているんですよ。R&Bは基本的に大衆音楽ですし、肩の凝らない音楽なので、それを神妙に語ることに矛盾を感じていたんです。学生時代からいろいろな評論を読んで「もう少し平易な言葉で語るほうがいいんじゃないか」と思っていたし、特に90年代はわかりやすく書くことを意識していましたね。ラジオ番組のDJがしゃべるように書いたり、“R&B愛好家・ケイシー松尾(※松尾さんの通称)にライター松尾潔がインタビューする”という形を取ったり(笑)、いろいろ文体を模索して。そんな僕の評論やライナーに対して「不謹慎、手抜き、低俗」という厳しい意見や叱責も耳に入ってきましたが、今読み返しても「やはりこれくらいのトーンがちょうどよかったんじゃないかな」と思います。

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