利用者と施設側とのコミュニケーションが重要な介護の現場(写真はイメージ、写真提供・リデルライトホーム)
利用者と施設側とのコミュニケーションが重要な介護の現場(写真はイメージ、写真提供・リデルライトホーム)
この記事の写真をすべて見る

「珍しいものではなかった」という介護現場でのカスタマーハラスメント(カスハラ)に、厳しい視線が向けられるようになっている。その背景には、現場で働く人材確保の重要性が高まっている現状がある。そして、人手不足の現場では、働く職員の質が低下し、それが「カスハラ」につながっているとの指摘もある。

【データ】こちらも衝撃…医療現場での「ペイハラ」

*   *   *

 車椅子を押して食堂のテーブルにつかせると、「いつもの角度じゃない」と大声で怒鳴りつける高齢の利用者。

「寝かせる角度が悪い」「着せている洋服のコーディネートが悪い」などと声を荒らげて指摘する家族。

 そんな「カスハラ」が、介護の現場では珍しくなかったと、日本介護福祉士会の前会長で、本市内の特別養護老人ホームで施設長を務める石本淳也さんは指摘する。

「ベテランの職員は慣れていて、お尻を触られたぐらいでは騒がずに笑いにしてかわしてきました。でも、新しく入ってきた職員に、『福祉の心でハラスメントをうまく受け流すことが当たり前』と言っていた時代は終わったんです。ダメなものはダメと、組織で毅然とした態度を示すことが求められるようになりました」
 

 そのような変化の背景にあるのが、介護業界での働き手をめぐる現状だ。

次のページ